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議院内閣制―変貌する英国モデル [著]高安健将

[評者]齋藤純一(早大教授)

[掲載]2018年02月11日

[ジャンル]政治

表紙画像

■日本の政治は「自省の材料」に

 小選挙区比例代表並立制が1994年の政治改革によって導入されてから20年以上が経った。この制度は英国のように二大政党制と政権交代を導くはずとされたが、日本では「一強多弱」の状態が続いている。
 選挙制度に限らず、政治主導や官邸機能の強化なども英国に範が求められた。官僚制や政権与党をコントロールできる権力を政府や首相に集中してはじめて、実効的で責任ある統治が可能になる、と。
 本書によれば、モデルとされた英国の議院内閣制にはそれを成り立たせてきた条件があった。だが、それは近年大きく変化している。二大政党(保守党と労働党)の得票率は低下傾向にあり、民意を集約できなくなっている。政府や首相への権力集中は、たしかに効率的な意思決定を可能にしたが、トップダウンの政策は良好な成果を上げてはいない。
 英国におけるこの間の国制改革は、こうした政治エリートへの信頼の低下を受けて、強くなりすぎた政府を制御する方向で進められている。議会による政府監視機能の強化、分権化や権限移譲、慣行の明文化や司法の積極化などである。
 日本では、山積する問題を実効的に解決していくためには強力なリーダーシップが必要だとまだ信じられているように見える。本書は、そうした思い込みを解く貴重な示唆を提供する。
 二大政党制による政権交代は政治を活性化するために本当に不可欠なのか。権力集中ははたして正解と言えるような問題解決を導くのか。与党や官僚の役割は政権を支え、政府の意に従うことに尽きるのか。選挙だけが政府を民意に向き合わせる機会なのか。
 本書のメッセージは明快である。必要なのは、「モデル探し」ではなく、「自省の材料を求める」ことである。英国を真似(まね)てきた「決められる」政治はどのような問題を抱えているか。本書を読んで振り返ってみたい。
    ◇   
 たかやす・けんすけ 71年生まれ。成蹊大教授(比較政治学)。ロンドン大で博士号取得。著書に『首相の権力』。

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