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共感のレッスン―超情報化社会を生きる [著]植島啓司、伊藤俊治

[評者]椹木野衣 (美術評論家)

[掲載]2018年02月11日

[ジャンル]社会

表紙画像

 かつて対談集『ディスコミュニケーション』を刊行した2人の著者による、なんと30年ぶりの「続編」である。時を経て私たちを巡る環境は激変した。だが全く変わっていないものがある。身体だ。もともと前著のタイトルは、新しいコミュニケーションの手段や方法が増えるほど、生身の身体が疎外されてしまう懸念に由来した。それは現実のものとなり、今や解きほぐしがたいものとなった。
 ゆえに本書では懸念ではなく処方箋(せん)が示される。だから「レッスン」なのだが、その際の鍵となるのが「共感」だ。私たちの身体は日夜、なにものかと共感している。身体に明確な輪郭などないからだ。ところが「わたし」がこの共感を邪魔する。
 強固な思い込みを解きほぐすため、生物学や人類学を巡る最新の知見の先で本書が強調するのは旅である。確かに人類は「知恵ある人(ホモサピエンス)」である前に、かつて哲学者・山内得立が説いた「旅する人(ホモヴィアトール)」ではなかったか。

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