書評・最新書評

新・日本の階級社会 [著]橋本健二

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2018年02月25日

[ジャンル]社会

表紙画像

■「アンダークラス」生まれ固定化

 「階級」をキーワードに、日本社会の格差の現状を、最新の社会調査データに基づいて読み解く書だ。階層ではなく、階級という言葉を用いるのは、(1)資本家(経営者、役員)、(2)新中間階級(被雇用者管理職、専門職、上級事務職)、(3)労働者、(4)旧中間階級(自営業)という四つの社会学的な階級分類に基づいて、議論を進めるからだ。
 しかし本書は、こう階級4分類を紹介しておきながら、実はいま階級は五つあるという。なぜなら近年、労働者階級の中で正規労働者と非正規労働者の格差が大きくなっており、非正規労働者層を一つの階級(「アンダークラス」と呼ばれる)とみなす必要が出てきているからだ。アンダークラスは就業人口の約15%を占め、平均個人年収は186万円と、他の階級に比べて極端に低く、貧困率は逆に極端に高い。経済的困窮だけでなく、心身の健康、人とのつながり、という点でもアンダークラスとそれ以外で明らかな格差がある。
 データからは、階級間での人々の移動性が低下し、階級の固定性が強まっていることが読み取れる。戦後日本の活力の一つは、社会的な流動性が高い点にあったが、労働者から新中間階級へ、さらに資本家へといった上昇のチャンスは、閉じられようとしている。
 気になるのは、アンダークラスで平等化への要求が、排外主義と強く結びつくようになっていることだ。日本でも、イギリスのEU離脱やトランプ米大統領誕生の要因となったポピュリズムと同様の芽が現れ始めているのだろうか。
 著者は、社会分断を乗り越えていく希望はあると強調する。格差縮小を志向し、排外主義・軍国主義化に批判的な、リベラルな価値観を持った人々が階級を超えて広範に存在することも浮かび上がってきたからだ。決して煽(あお)らず、データに基づいて冷静沈着に論を進める筆致に好感がもてる。格差を論じる上での、基本書となるだろう。
    ◇
 はしもと・けんじ 59年生まれ。早稲田大教授(理論社会学)。『「格差」の戦後史』『階級都市』など。

関連記事

ページトップへ戻る