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原発災害と地元コミュニティ―福島県川内村奮闘記 [編]鳥越皓之

[評者]椹木野衣 (美術評論家)

[掲載]2018年03月11日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■揺れ動く村の姿、克明な記録

 3・11から今日でちょうど七年を迎える。私は2015年から自治体の認可する公益事業の一環で定期的に帰還困難区域に入り記録を行ってきた。ここに来て現地は大きく様変わりしている。居住制限区域でも復興拠点を中心に帰町へ向けての準備が急速に進みつつあり、一年も経つとここがどこだったか皆目わからなくなってしまうほどだ。
 そうした区域に隣接する川内村は発震の翌日から東電福島第二原発が立地する富岡町からの大量の避難民を受け入れ、続いて村自体が全域にわたり避難の対象となった。12年1月には他の自治体に先駆けて「帰村宣言」がなされ大きな議論を呼んだ。その七年は、今後ほかの原子力災害被災地でも同様に出てくるであろう選択肢や論点を予見する性質を持っている。
 本書は、そのうち15年くらいまでの「帰村と避難との間で葛藤し、二地域居住を続ける住民が多くを占めていた」「揺れ動く村の姿」を克明に記録する。記録と言っても無味乾燥ではない。川内村の歴史や成り立ちに始まり、住民ごとに異なるライフストーリーや地域のリーダーたちによる震災の対応への見解を経て、その間に起きた出来事を可能な限り日・時・分単位で記録した「年表ならぬ分表」に至る四部を備える。「今の時点で記録しておかなければ、それは永遠に消滅してしまう」危機感がひしひしと伝わる。
 さらに言えば、もとより深刻な過疎化の問題を抱えていたものの、原発被害で住民の数が一気に減り、「時計の針が急激に回って、20年後先に起こるはずのことが、今現実に起こった」村の姿は、被災地であることを超えて、これから日本全体を通じ国家規模で起こることを先取りしていないか。「すべての問題の根源にあるのは人口が減っていくことなんだなって、つくづく感じます」と語る村長の言葉は、七年前の今日からを生きる私たち一人ひとりへと向けられている。
     ◇
 とりごえ・ひろゆき 44年生まれ。大手前大学長。専門は社会学、民俗学など。『琉球国滅亡とハワイ移民』ほか。

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