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「家計簿と統計」 世帯の支出で読む、暮らしの変化

 「今月は前年に比べて家計の支出が何%減」――新聞やテレビで報道されるこうしたニュースは、無作為に選ばれた全国約9千の世帯が実際につけた家計簿を集計した総務省の「家計調査」によるもの。報道では全国平均の総額の変化のみが伝えられることが多いが、支出内訳は500種類以上に細分化され、世帯人数や地域、所得などの世帯の属性別の金額も集計されており、様々な分析に使える。

 本書では30年以上にわたり政府で統計に携わってきた著者が家計の変遷を読み解く。ランドセルの購入時期が年々早まっていること、ふるさと納税の普及で年末に寄付金が急増するようになったこと、和食のイメージがある京都も神戸に次いでパンの消費が多い地域となっていることなど、家計簿からは暮らしの変化や特色が見えてくる。

 本書はインターネットを使って地域別や時系列のデータを調べる方法も丁寧に解説している。コロナ禍で大きく変わった生活様式は、支出の変化にも如実に表れてきているはずだ。今、誰がどのようなモノやサービスを求めているのか、本書を手掛かりに自分の気になる支出項目のデータを見てみれば新たな発見を得られるかもしれない。=朝日新聞2020年9月19日掲載