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松尾太郎さん『宇宙から考えてみる 「生命とは何か?」入門』インタビュー 心に落ちた雷、旅は続く

松尾太郎さん

 太陽系外の惑星に生命の存在は?

 「いると思う。生命は宇宙にありふれた存在なのか、それとも珍しい存在なのか明らかにしたい」。その一心で生命探査のための観測装置や技術を開発している。

 本作は天文学の誕生から生命探査の最前線までかみくだいて描かれている。ここに生きているってすごいことなんだね。そう思えてくる。

 執筆のきっかけは4年ほど前、米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターでのウィリアム・ボルッキさんとの出会い。2600個以上の惑星を見つけたケプラー宇宙望遠鏡を主導した人である。研究室が隣という縁で苦労話を聞くことができた。科学者の不屈の精神を感じ、気持ちがわきたったのだった。

 「地球のような惑星が太陽系外にあるか知りたい!という一念を何十年も貫かれた。その精神が科学を一歩進めるんだと伝えたいと思った」

 特に星が好きな子ではなかった。だが名古屋大理学部に入り、「10年後には宇宙で生命を探す時代がくる」と教官が話した時、心に雷が落ちた。1995年に系外惑星が発見され、関心が高まった頃だった。

 では、生命とは何なのか。いまの研究はその答えを探す旅でもある。「生命それぞれで特徴は違うかもしれないが、必要なのは情報をうまく伝える仕組み。さらに惑星の環境がどういう生物を生かすかを選択する」。物質、情報、惑星の環境のかけ算が生命を生むと考える。

 それでは自分が生きる意味は何だろう。「前の世代の研究者から受けとった思想や技術を次へ受け継ぐ。バトンリレーの中の1人かな」

 以前から小学校などで子どもたちに宇宙のおもしろさを伝えている。「昆虫はなぜ6本足なのとか、ちょっとした疑問を大切にしてほしい。それが科学の入り口だと思う」(文・写真 河合真美江)=朝日新聞2023年12月2日掲載