借りたお金を返すのは当たり前。そんな常識が必ずしも通用しなかった中世で、何度も出された借金を帳消しにする法令と、その末路を解説する「徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか」(講談社現代新書、本体880円)を書いた。
室町時代の徳政令は、当初は借金に苦しむ庶民には歓迎されるが、次第に経済活動を不安定にし、人の心もむしばみ、忌み嫌われる存在になる。徳政令の変遷を追うだけでなく、その抜け道を探そうとする庶民の知恵なども描いた。「許されるなら、借金を返したくないのが人間の本音。それを現実にした法令から、中世経済の実態を知って欲しい」
日本中世史が専門。研究を始めたころは人気がなく、研究者も少ない分野だった。研究の方法論から考える必要がある中、財政面から歴史を眺める手法で中世社会の復元に挑んだ。「歴史学という学問に魅せられ、ここまできた。50歳を前に、歴史学の魅力を広く伝えたいという思いが強くなった」と話す。次は戦国武将の明智光秀に関する自身の研究を1冊にまとめたいという。(渡義人)=朝日新聞2018年10月31日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 青木冨貴子さん「アローン・アゲイン」インタビュー 米国人ジャーナリストの夫と過ごした33年「大恋愛でした」 北野隆一
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 呪いとは何か 現代に生きる呪術に迫る3冊 朝宮運河
-
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「陰陽師0」奈緒さんインタビュー 平安時代の女王役「負の感情を『陽』に。自分の道は変えられる」 根津香菜子
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 生きるために、変化を恐れない。迷いが消えた福岡伸一「生物と無生物のあいだ」 中江有里の「開け!野球の扉」 #13 中江有里
- 大好きだった 君のお父さんもお母さんも立派な人だった 増田俊也 増田俊也
- インタビュー 「尾上右近 華麗なる花道」インタビュー カレーと歌舞伎、懐が深いところが似ている 中村さやか
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社