カトリックとプロテスタントが協力して翻訳した『聖書 聖書協会共同訳』が昨年12月、日本聖書協会から刊行された。1987年の「新共同訳」の改訂版ではなく、原文からの新たな翻訳だ。詩人や歌人らも加わり、より格調高い日本語となった。
翻訳作業には7年余りが費やされた。文意を解釈し直した部分もある。
旧約聖書「コヘレトの言葉」9章9節の一文は以前、「愛する妻と共に楽しく生きるがよい」とされていた。しかし「楽しく」と訳された原語は「見る」という言葉だ。通例にとらわれず、今回は「愛する妻と共に人生を見つめよ」。前後の文章と合わせると、空(くう)である人生をありのままに受け取って日々を大切に過ごせ、という意味合いに変わった。
新しい知見も採り入れられた。「レビ記」にはこれまで「強い酒」と訳された言葉がある。それが古代のエジプトやメソポタミアの穀倉地帯でつくられていたビールと分かってきた。そのため今回は「麦の酒」と改められた。
前回は女性委員が3%で、今回は23%。女性の意見が反映され、「はしため」という言葉は不快語であるとして「仕え女(め)」に改められた。
旧約の編集委員の一人で、上智大学の月本昭男特任教授はこう話す。「100%正しい翻訳はありえないが、これまでの翻訳聖書に残っていた間違いや不適切な部分はかなり改善された。聖書が人類の古典であることもふまえられているので、信徒ではない人にも自然に読んでもらえると思う」(磯村健太郎)=朝日新聞2019年1月9日掲載
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