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黒人奴隷、自由への逃亡の旅 「子どもの本棚」オススメ本3冊

「彼方の光」

 時は今から160年前。その頃のアメリカ南部にはまだ黒人奴隷がたくさんいて、報酬ももらえず白人農場主にこきつかわれていた。ある晩、老奴隷のハリソンは少年奴隷のサミュエルを起こし、闇に乗じて2人でカナダへの逃亡を始める。そして、何度も危ない目にあいながらも、「地下鉄道」にも助けられて、旅を続けていく。「地下鉄道」とは、当時実在した、逃亡奴隷を北へ北へと逃がすための人間の秘密ネットワークで、黒人だけではなく、白人も先住民も、宗教上の理由から助けようとする人たちもかかわっていた。この作品にも多様な立場から逃亡を支える人々が登場する。いくつもの実話から紡ぎ上げた物語で、サミュエルの気持ちになって読み進めることができる。(シェリー・ピアソル作、斎藤倫子訳、偕成社、税抜き1600円、小学校高学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「チェリーシュリンプ わたしは、わたし」

 主人公のダヒョンは父親を交通事故で亡くし、母親と2人暮らしの中学2年生。いつも仲良し5人組で行動しているが、町のコミュニティー新聞を作ることになり、仲間が嫌っていたウンユと同じグループになる。グループでの打ち合わせを重ねるうちに、ウンユと親しくなっていくダヒョンから仲間は離れていく。思い悩むダヒョンがやがて「わたしはわたし」と気づき、勇気を出して行動していく姿がたのもしい。友だち関係に悩む10代の子どもたちにエールを送る韓国生まれの物語。(ファン・ヨンミ作、吉原育子訳、げみ装画、金の星社、税抜き1400円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「うしとざん」

 うしとざん? そうそう、素直に変換すればいいんです。なんにも考えないで、目の前の牛に登ってみましょう。どこから登ったっていいんです。目の前の毛をつかんで上へ上へ。縮こまった身体に、心地のよい刺激。山頂の草原ならぬ牛の広い背中は、散策にもってこい。おなかがすいたら、食事処(どころ)でおいしいごはんをいただきます。じゅうぶん堪能したら帰りましょう。しっぽから下りれば、運がつくかも。この一冊で最高のリフレッシュになること、まちがいなし!(高畠那生作、小学館、税抜き1400円、4歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2021年1月30日掲載