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食料安全保障の危機的現状を訴える「世界で最初に飢えるのは日本」 三牧聖子が選ぶ新書2点 

『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』

 岸田文雄政権は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」をあげて防衛費の大幅増額を閣議決定した。しかし危機は軍事的なものだけではない。鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』(講談社+α新書・990円)は、日本の食料安全保障の危機的現状を訴える。日本の食料自給率は4割弱。効率を優先して農作物、種や肥料、飼料まで外国に依存してきた。しかし輸入が途絶えたらどうなるのか。ウクライナ戦争を受けインドは小麦の輸出を停止し、ロシアは小麦の他、肥料の原料になるカリウムの輸出も止めた。日本はこの危機を直視できているのか。
★鈴木宣弘著 講談社+α新書・990円

『田中耕太郎 闘う司法の確立者、世界法の探究者』

 牧原出『田中耕太郎 闘う司法の確立者、世界法の探究者』(中公新書・1034円)は、東京帝大法学部長、文部相、最高裁長官、国際司法裁判所裁判官などを歴任し、教育権や司法権の確立に尽力した田中耕太郎の魅力的な評伝。最高裁長官時代の振る舞いから「反共」「反動」と批判されてきた田中だが、本書は、若き日の世界法の探究や、そうした学問に基礎付けられた日本国憲法と教育基本法の熱心な擁護にも光をあてる。田中の格闘が示すように、制度の独立は政治介入を拒絶するだけでは成し遂げられない。「独立」とは何か。どのように実現できるのか。田中は今も私たちに問いかける。
★牧原出著 中公新書・1034円=朝日新聞2023年1月7日