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外交戦略の本質を読み解く「インドの正体」 詫摩佳代が選ぶ新書2点 

『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』

 ロシアのウクライナ侵攻以降、インドの動向に世界の注目が集まっている。実際どのような国で、どう付き合っていけば良いのだろうか。伊藤融(とおる)『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中公新書ラクレ・902円)は、この国の外交戦略の本質や昨今の傾向を読み解いていく。インドは価値観や対中国認識に関しては欧米各国や日本と相いれない部分こそあるが、それでも中国やロシアに比べれば我々に近い国であり、とりわけ経済安保分野でのアジア太平洋諸国との連携強化に可能性を見る。
★伊藤融著 中公新書ラクレ・902円

『第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』

 笠井亮平『第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』(文春新書・1100円)も、その外交戦略を論じる。印中関係のダイナミズムは、陸ではユーラシア、海ではインド太平洋の国際関係に広く影響を及ぼしていると指摘。ただしインドにとっては中ロともに簡単に敵に回せる相手ではなく、インド独自のイニシアチブを打ち出しつつ、同志国との連携を強化する戦略的パートナーシップを重視していると説く。

 2冊からは、極めて現実的な視野で多角的な外交を展開するインドの姿が浮かび上がる。リベラルな国際秩序を維持していきたいのであれば、おのずとこちら側の外交に求められるものも見えてくる。
★笠井亮平著 文春新書・1100円=朝日新聞2023年4月22日掲載