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大江健三郎さんお別れの会、ゆかりの作家らしのぶ 中村文則さん「まるで本のなかのヒーロー」

祭壇には大江健三郎さんの笑顔の写真が飾られた

 13日に東京都内で開かれた「大江健三郎さん お別れの会」では、親交のあった作家らが集まり、3月に88歳で亡くなった大江さんの遺影を前に、別れの言葉を述べた。会場の片隅には、各出版社が持ち寄った大江さんの著書が並んだ。

 作家でミュージシャンの町田康さんは、大江さんと対談した際のエピソードを披露した。「大江さんの存在は、読まんでも読んでも重たい。面白い話を聞いているときでも重たかった」と笑いを誘い、大江作品は「長い間ずっと私たちの社会の深いところにある重りのようなものとして、あったのではないのかなと思います」と語った。

 また、作家の平野啓一郎さんは「大江以後の小説家として、私は大江文学に圧倒されつつ、自分なりに発展させるべき課題と、批評的に克服していくべき課題とを見いだしていました」とスピーチ。「大江さんの存在は、今後も私の文学との向きあい方、政治との向きあい方に対して、本当にそれでいいのかと熟考を求める、励ましに満ちた一つの緊張であるでしょう」

お別れの会では、大江さんの著書も展示されていた=いずれも13日午後、東京都千代田区、小林一茂撮影

 一方で、学生時代から大江さんの大ファンだったという作家の朝吹真理子さんは、初対面の際に緊張のあまり失神した思い出を語った。

 東京大に今月開設された「大江健三郎文庫」を訪れ、自筆原稿を目にしたと明かし、「文字の力に圧倒されて、その夜は汗でTシャツを着替えるくらいの悪夢を見ました。とても寛容でやさしいけれども、まがまがしさを抱えた両側面が、大江さんのなかにあったと思います」と話した。

 大江さんが一人で選考をする「大江健三郎賞」の受賞者で、作家の中村文則さんは「読者としても作家としても救われました。僕にとって大江さんは大恩人になります」と述べた。

 「大江さんは社会問題にも積極的にかかわり、常に強い側ではなく、弱い立場の側に立つ人でした」としたうえで、「圧倒的な作品によって世界中の読者を救い、社会のなかでは弱い立場の側に立って声を上げ続けた。あまりにもかっこよくて、すごすぎて、まるで本のなかのヒーローのような人でした」としのんだ。(山崎聡)=朝日新聞2023年9月20日掲載