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「わかち合う場」としての書評 米文学者・都甲幸治さん『文学「再」入門』

 書評とは何か。本の紹介文? 本をフックにした評者の作品? 読書面担当者にとって悩ましい問いに『大人のための文学「再」入門』がヒントをくれた。元・朝日新聞書評委員の都甲幸治(とこうこうじ)さんによる、新聞や雑誌への寄稿をまとめた書評集だ。

 米文学者で翻訳家の都甲さんは昔、書評を通して自分の格好良さを見せることに腐心していたと話す。難しい本を短期間で読み、幅広い教養をもって論じる。でも、なぜか読者の反応はいまいち。「評者の技ではなく、その本の魅力を伝えること。『自分』を取り去るのがすごく重要だと、だんだんわかってきた」

 本の魅力はあらすじにはない。作品の裏側で何が起きているのか、著者本人も気づいていない変化や思いを探り当て、わずか800字で謎かけのように読者に示す。そうして生まれた書評は単なる情報の媒体ではない。著者に読者、訳者、評者、その本に関わる全員が「感覚や感情をわかち合える場」として機能する。

 小説を中心にさまざまな書評を収録した本書だが、必ずしも対象となった本を読んでもらうことがゴールではないと都甲さん。「現地に行かなくても旅行記を読む意味はある。本との関わり方の一例として、自分なら他の本を読んでどう思うかな、と考えてもらえたら」(田中ゑれ奈)=朝日新聞2023年12月2日掲載