〈マンガ今昔物語〉第84回 夏だからペンギン!

2017年08月16日

 昔からペンギンが好きだ。都内のサンシャイン水族館やアクアパーク品川はもちろん、北海道の旭山動物園や九州の長崎ペンギン水族館にも足を運んだことがある。なんといっても「人鳥」とも呼ばれるユーモラスなシルエットがいい。ペットとして飼うのは難しそうだが、ただ見ている分には犬や猫より可愛いと思う。
 ペンギンを主人公にしたマンガというと、たとえばアニメ化もされた『忍ペンまん丸』(いがらしみきお)などが有名だが、ライターの五十嵐大さんによると、かつて『ハ〜イ ペンギン探偵事務所ですう』(水越かりん)という作品もあったらしい。
 1994年に「デラックスボンボン」に連載された子ども向けミステリーで、登場するのは全員擬人化された動物たち。ペンギンの名探偵・金田一(カネダイチ)が「わくわく動物島」で起こる数々の殺人事件(人じゃないけどな)を解決していく。累計9000万部を誇る『金田一少年の事件簿』(天樹征丸・さとうふみや)が大ヒットしていた影響もあったのだろう。第1話で金田一を「キンダイチさん」と呼びまちがえていたセイウチ警部が後に同級生だったことが判明するなど、行き当たりばったりの展開もご愛敬だ。
 最近は「BE・LOVE」連載中の『おこしやす、ちとせちゃん』(夏目靫子)が人気を集めている。
 ちとせちゃんは京都に住むコウテイペンギンのヒナ。名前や仕草を見るとメスらしい。毎回6ページの一話完結型で、荷物を入れた袋を背中にくくりつけて京都の街を歩き回る。その姿がとにかく愛くるしく、ペンギン好きのハートをガッチリつかむ。
 嵐山、京都タワー、清水寺、銀閣寺など、世界的に有名な京都の名所が次々と登場。ちとせちゃんは京都市民に広く知られた存在だが、観光客には一様にビックリされる。居酒屋でおでんをごちそうされたり、買い物を頼まれたりもするが、アルコールは飲めないし言葉を話したりもしない。ファンタジーといえばファンタジーなのだが、微妙にリアルな設定がいい。現金を持っているとは思えないちとせちゃんがフツーに電車に乗ったり映画館に入ったりできるのは、京都市や私鉄各社が配慮しているのかもしれない。
 それにしても、ペンギンの中でも寒冷地に生息するコウテイペンギンにとって、京都の夏はキツイだろうなぁ。

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水越かりん『ハ〜イ ペンギン探偵事務所ですう』全1巻(講談社)1994年開始
夏目靫子『おこしやす、ちとせちゃん』既刊2巻(講談社) 2016年開始

プロフィール

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伊藤 和弘

1967年、新潟県生まれ。新潟大学法学部卒業。編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。99年から朝日新聞「コミック・ブレーク」で、インタビューと作品解説を担当する。著書に『少年マガジン伝説』(電子書籍)、『男こそアンチエイジング』(日経BP社)がある。
Twitter:@itokazraita
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