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グローバル中国への道程 [著]川島真ほか/高まる生活リスク [著]飯島渉ほか

[評者]天児慧(早稲田大学教授)

[掲載]2010年03月28日

[ジャンル]政治 国際

表紙画像

■「問題群」の視角から中国を論ずる

 中国という国は「何でもあり」の世界である。そこには最先端から原始的社会、富豪と極貧、大飢饉(ききん)と大豊作、また多様な言語と食生活などが同時に存在している。個別の中国を論じた書物は多い。しかし全体像を描きながら、中国の核心に迫っていくことは必ずしも容易ではない。
 本書は、「中国的問題群」と題する叢書(そうしょ)全12冊シリーズの近刊2冊である。ちなみにシリーズの趣旨は「20世紀の時空間から問題を透視し、現在までを連続するプロセスとして描き直し、それぞれの分野で『問題』を立て歴史的意味付けをし」、「将来に向けた問題解決の道筋を展望する」ことである。
 中国の外部世界とのかかわりから「問題群」を論じたのが前著であり、内部世界のそれを論じたのが後著である。では前著の問題群は何か。ここでは必ずしも明確ではない。が、それを解くカギとして(1)国際主義とナショナリズム(2)中国の国際社会における自己認識や役割(3)中国の伝統的な対外観や思想、政策のあり方、の三つの問いが提起されている。本書の後半では中国外交に見られるキーワードがコンパクトに紹介され外交理解に役立つ。しかし「大国化する中国」「中国脅威論」「中華民族の偉大な復興」「中国的秩序論」などは、ここでの問題群として核心的なテーマであり、三つの問いに深くかかわっている。これらはもっと本格的に論じてほしかった。
 後著の核心的な問題群は、社会保障や医療制度の後退、つまりセーフティーネットの問題である。中国では東洋医学など古くからの健康や養生、病気治療の知識や経験が蓄積されている。計画経済時代には合作医療制度があり、曲がりなりにもそれは存続していた。しかし今日では「看病難、看病貴(金がかかる)」といわれるように、市場化の波に放り込まれ大きく後退している。経済を発展させながら社会の充実をいかに図るかは今後、改革開放の真の成果を問うカギになる。いずれにせよ躍進目覚ましい中国を「問題群」という視角から論ずる試みは新鮮であった。
 評・天児慧(早稲田大学教授・現代アジア論)
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 岩波書店・各2520円/『グローバル中国への道程』かわしま・しん、もうり・かずこ▽『高まる生活リスク』いいじま・わたる、さわだ・ゆかり

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