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古典として読む『イワンの馬鹿』 [著]法橋和彦

[評者]

[掲載]2012年10月07日

[ジャンル]歴史 文芸

表紙画像

 3人兄弟の仲を裂こうとする、どこか間抜けな悪魔の試みは、農民イワンの絶対的な非暴力の前にすべて失敗する。トルストイのこの民話「イワンの馬鹿」ほど、日本人に読みつがれてきた外国作品はないのでないか、とロシア文学者の著者はいう。内田魯庵(ろあん)をはじめ、邦訳も多い。その新訳と詳細な訳注・解説を収める。
 子ども向けの訳では気づかなかった発見がある。ライト兄弟が初めて動力飛行に成功する17年も前に、この作品では敵を空爆する空飛ぶ独身女性部隊が描かれていた。その卓抜な想像力。近未来の戦争で最も犠牲を強いられるのは職業軍人ではなく、非武装の一般市民、とトルストイは予見していた、と著者は指摘する。
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未知谷・3150円

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