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「森敦との時間」書評 チチの文学への著者の信頼

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年10月28日
森敦との時間 著者:森 富子 出版社:綜合社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784777710133
発売⽇:
サイズ: 20cm/268p

森敦との時間 [著]森富子

 著者は森敦の養女で文学上の弟子でもある。「月山」で芥川賞を、史上最年長の61歳で受賞してから、「チチ」の周辺はにわかに華やかになった。横光利一との交友や長い放浪を経たチチは、別に浮かれるわけでもないが、小説を書くはずの時間が削られる。それでなくても小説の理想が高いので、なかなか書き始めず、書いても途中でやめてしまうこともあるのに。「小説を書いてほしい」と願い、生原稿を最初に読む読者で、暮らしを支える著者であっても、作家の創造の現場は、結局は見守るしかない。ただ、チチの文学への著者の信頼は、いささかも揺るがない。前著『森敦との対話』の続編で、チチの死までを記す。森敦は今年生誕100年。
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 集英社・1995円