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足軽の誕生 室町時代の光と影 [著]早島大祐

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2012年12月16日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■個性的な人間ドラマが展開

 室町時代とはいったいどんな時代なのか? 本書はそれを解き明かし、時代の活気を描き出している。室町時代とは、鎌倉に幕府が置かれて政治機能が分散していた日本に、久々に実質的な首都が生まれた時代だ。しかしその京都には、足軽という強盗集団のような連中がいて、盗み、殺人、喧嘩(けんか)が頻繁に起こっていたという。本書のおもしろさは、その殺伐とした雰囲気から始まるところだ。
 このころの京都は、家をとりつぶされたり、雇用先を失った牢人たちの流れ込む都市でもあったことを、『さんせう太夫』の厨子(ずし)王丸の事例を使って描いたところも面白い。章ごとに登場人物が設定され、実に個性的な人々のドラマが展開する。博打(ばくち)や税金対策や一揆のかけひき、そして足軽に身を落としてゆく成り行きなど、華やかで自由な室町文化の背後に、生々しい人間が見える。都市の本質は、時代が違ってもあまり変わらないのだ。歴史的事実が現代社会の問題と重なる。
    ◇
 朝日選書・1365円

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