1. HOME
  2. 書評
  3. 「中原淳一 美と抒情」書評 戦後の若者文化に「ひまわり」

「中原淳一 美と抒情」書評 戦後の若者文化に「ひまわり」

評者: 出久根達郎 / 朝⽇新聞掲載:2013年01月13日
中原淳一 美と抒情 著者:高橋 洋一 出版社:講談社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784062179690
発売⽇:
サイズ: 20cm/269p 図版16p

中原淳一 美と抒情 [著]高橋洋一

 今年は中原淳一の生誕百年である。二月十六日、香川県に生まれた。
 この人を語る時、少女画家、ファッションデザイナーの顔が強調されるけど、業績はそれだけではない。十九歳で個展を開き注目された創作人形が彼の出発点である。本の装幀(そうてい)、シャンソンの作詞、手工芸家、演出家、スタイリスト、女優・浅丘ルリ子の発掘者、何より、「ひまわり」「それいゆ」他の雑誌主宰者としての編集センスである。
 リンゴの唄で戦後の活気が始まったように、中原の雑誌で若者文化が花開いた。モンペやズボンで戦時下を過ごしてきた少女たちに、ズボンの裾を広げさせた。リフォームの仕方を教えた。服装に限らぬ。工夫一つで変化する室内装飾や小物。美しくなるためのおしゃれは教養だ、と雑誌の執筆者には各界の第一人者を揃(そろ)えた。少女誌に黒沢明、渋沢龍彦、三島由紀夫らである。誌名通り、大輪の明るい花が開いた。本書は中原の入門書、偉業の分析はこれからだろう。
    ◇
 講談社・2520円