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木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」 [著]通崎睦美

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年10月27日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■その音色で全米の子が目ざめた

 評者には木琴は、昭和の音色である。戦後六、七年頃(ごろ)、小学校の音楽室で聞いた。田舎の子の耳にはハイカラな響きだった。平岡養一の名は、ラジオで知っていた。こんな字を書くとは本書で教えられた。養生第一を願っての、命名者が伯父のひろしで、この人は日本野球の祖である。
 養一は独学で木琴を学び、アメリカに渡る。やがて毎朝十五分間のラジオレギュラー番組を持つ。全米の子らは平岡の木琴で目をさました。放送は約十一年続いた。
 戦争になり帰国する。平岡は民謡歌謡タンゴ等なんでも弾けた。指揮者の岩城宏之は平岡の木琴で音楽に導かれた。マリンバ奏者の著者は、十歳の時に平岡と共演、彼の人生に興味を抱き、資料を集めて本書をまとめた。木琴の歴史(すでに江戸期に存在)も面白い。ブリヂストンと関係があるなんて誰も知らないだろう。著者の旺盛な好奇心が、充実した人物伝を完成させた。木琴奏者・平岡養一、もって瞑(めい)すべし。
    ◇
 講談社・1995円


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