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民家日用廣益秘事大全―江戸庶民の生活便利帳 [著]三松館主人 [訳]内藤久男

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年11月03日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■江戸の「これは便利だ」事典

 江戸時代の「やっ、これは便利だ」日用百科事典である。
 こんな内容。シャックリを止める法。冷水に寺と三回書き、その水を三口で飲む。
 大便をこらえる法。男は左、女は右の掌(てのひら)に指で大と書き、舌で三度なめる。小便の場合は同様に小と書く。
 ばかばかしい教えばかりではない。炭火をはねさせない法は塩をつまみ入れる、とか、溺れた人を助けるには後ろから抱く、前から抱くとしがみつかれて共に沈みかねない、など理に適(かな)った記述もある。
 いや、正否の問題ではない。当時の人々が何を考え何を求めていたか、どんな不安を抱き悩み苦しんでいたか、本書の約一千項目を読めば見えてくる。白毛の染め方がある。毛生え薬や抜け毛の薬もある。昔の人も髪には苦労していたのだ。海水に浸(つか)った本は、表紙を外して、塩を入れた水桶(おけ)に浸(ひた)して塩抜きをし……。
 船で読書中に本を落としたのだろうか。いろんな想像がわいてくる。庶民生活を知る珍書である。訳文も読みやすい。
    ◇
 幻冬舎ルネッサンス・2310円



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