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楳図かずお論―マンガ表現と想像力の恐怖 [著]高橋明彦

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2015年09月13日

[ジャンル]社会

表紙画像

■恐怖とギャグ、自在な視点の妙

 『漂流教室』等の恐怖マンガで知られる楳図かずおは、一方で『まことちゃん』のようなギャグも描き、赤白の縞(しま)シャツを着てTV出演するコミカルな姿も印象的だった。
 それは決して分裂ではない。追われる側は怖くて必死に逃げるが、追いかける側は逃げる人が転んだりするのを見て笑う。距離によって恐怖と笑いは入れ替わると考える「遠近法主義」こそ、楳図の真骨頂だと著者は考える。
 1980年代以降には神=超越的なテーマを好んで描くようになるが、そこにも断絶はない。「なぜ子どもは悪夢にうなされるのか」「世界の果てはどうなってる」のかといった「謎」を巡って想像力を駆使し、巨視と凝視を往復しつつ自在に表現してきた点で楳図は一貫している。
 本書はそんな楳図作品の魅力を余すところなく論じようとする。ポストモダン哲学を引く思弁的な箇所を含め。憑(つ)かれるように読ませてしまう訴求力は楳図譲りか。装丁の赤白縞は伊達(だて)ではないのだ。
    ◇
 青弓社・3888円

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