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「中東の現場を歩く」書評 日本人の視点から見るために

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2016年01月31日
中東の現場を歩く 激動20年の取材のディテール 著者:川上 泰徳 出版社:合同出版 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784772612487
発売⽇: 2015/12/30
サイズ: 19cm/391p

中東の現場を歩く―激動20年の取材のディテール [著]川上泰徳

 「中東はテロであふれている」と著者は書く。だから、30人以上が死んでも「またか」と思われるだけだ。朝日新聞記者として20年、中東を取材し、現在はフリージャーナリストとして活動する著者が、具体的な人や出来事から過去と現在をつなぐ。中東の現状は、あまりに複雑に絡み合って解きほぐせない糸のようだが、紛糾の一端は1990年代のイラクへの国連制裁ではないかと見るのは興味深い。経済制裁で国民が犠牲になり、子どもたちが生存や教育の機会を奪われた。いま20代から30代になり、そのイラクから「イスラム国」が生まれている。日本人の視点から見るためにも、紛争地に日本人ジャーナリストが行く必要があると説く。
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 合同出版・2376円