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『木のものづくり探訪――関東の木工家20人の仕事』 一生つかえる逸品と出会う

『木のものづくり探訪--関東の木工家20人の仕事』(創元社)

木を素材にした多彩な作品の数々

 サブタイトルに「関東の木工家20人の仕事」とあるように、本書では、関東地方(山梨県を含む)在住で、木を素材にしてものづくりに取り組んでいる木工家たちの人となりや作品を紹介しています。多彩な作品を生み出す作り手たちの姿に迫りました。

 腰にフィットする椅子やスタイリッシュなスツールなどを製作する家具作家、木の器やスプーンを削り出すクラフト作家、木地づくりの段階から手掛ける木漆工芸家、様々な木の色を組み合わせながら文様や絵に仕上げていく寄木細工技能師や木象嵌(もくぞうがん)作家、西洋の伝統的な家具を復元する家具修復家、伝統工芸の技を用いて小箱に仕上げる指物師、着物でもスーツにも似合う「樹の鞄」を彫り出す作家……等々。

 このような木工家を紹介する本を最初に上梓したのは、今から19年前のこと。北海道で暮らす木のものづくりに携わる人たちを紹介した本でした。その後、信州編、関西編、東海・北陸編と続き、関東編へと至っています。今では、ベテラン若手を問わず、オリジナリティーが感じられる作品を生み出す木工家を見つけ出し、世に紹介していくのが私のライフワークのようになっています。

 読者からよく聞かれるのが、「どういう基準で、本に掲載する木工家を選んでいるのですか」と。この質問に対して一言では答えにくいのですが、最近は「技術力やデザインセンスに加えて、人柄ですかね」と話しています。作品から醸し出される作り手の個性や感性、その人の人柄が作品に投影されているものが琴線に触れた時に、この人からじっくり話を聞いてみたいという思いがふつふつと湧き起こってくるのです。

紹介した木工家の五つの共通点

 今までに刊行した木工家紹介本で取り上げた人たちには、おおむね以下のような共通点が見いだされます。

 まず一つ目は、しっかり自分というものを持っていること。自分なりのポリシーを持ち、強い信念が感じられます。そういうところから、他者とは異なるオリジナリティーが生まれているのでしょう。本人はあまり自覚せずとも自ずと作品に表れています。

 二つ目は、人との出会い、つながりを大切にしていること。「たまたまいい先生に巡り合えた」「偶然の出来事から、その作品が生まれた」とインタビューで話してくださる方がいます。出会いや縁というのは、じっとしていて得られるものではありません。積極的に教えを請いに出向いたり、勉強会に参加したりすることからチャンスが生まれてきます。「運も実力のうち」とよく言われますが、じっと待っていても、運をつかむことはできません。

 これに関連しますが、三つ目はみなさん好奇心が旺盛なこと。木工以外の分野のことに興味を持ち、新しいことへの取り組みにも貪欲です。好きな作り手や気になるアーティストを尋ねると、画家、陶芸家、ガラス作家など、木以外の素材を扱う人の名を挙げる方が多い傾向にあります。

 四つ目は、ある種のたくましさと柔軟さを持ち合わせていること。中学や高校を卒業してすぐにこの道に入った人もいますが、30歳を過ぎてから仕事を辞めて職業訓練校で木工技術を始めた人や、たまたま雑誌で木工家の記事を読んですぐにその木工家の工房を訪ねた人もいます。行動力と、人が生きていく上での強さを感じるのです。

 五つ目は、一見、豪胆に見える人でも繊細な感性を持ち合わせていること。粗削りな作風であっても、細部の面取りがきっちりなされており、ラインの美しさ、絶妙なアールの加減などが表現されているのです。

作り手の人柄まで伝える写真

 このように、工房での取材を通して、木から生まれる奥深い作品に触れながら各地の木工家たちと接してきました。取材時には、幼い頃から現在までの生い立ちをじっくりうかがうことにしています。どのような半生を送ってきたのかを聞き、人となりを知ることによって、作品に対しての理解が深まると思っています。

 カメラマンの渡部健五さんと関東エリアの工房を訪ね歩いたことから、『木のものづくり探訪 関東の木工家20人の仕事』のタイトルが付けられました。作り手それぞれの人柄と作品の奥深さを、渡部カメラマンがすべて現場で撮影した写真(スタジオ撮影なし)とともにお楽しみください。