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今田絵里香『「少年」「少女」の誕生』 「少年」「少女」に関する知の歴史

記事:ミネルヴァ書房

執筆の背景

 「子どもの男らしさ・女らしさがどのようにできたのかを明らかにしたいと思っています」と語る今田絵里香先生。今田先生は、これまで「少女」に関する知がどのように作られたのか、また、なぜ作られたのかを明らかにしてきました。しかし、その後、「少年」に関する知がどのように作られたのか、また、なぜ作られたのかを明らかにしようと考えるようになりました。

 ただ、本書で明らかになったように、「少年」「少女」は関連し合っているため、単独で明らかにすることはできないことがわかってきました。そのため、「少年」「少女」に関する知が、どのように作られたのか、また、なぜ作られたのかを明らかにしようと思うようになりました。

 そして、今田先生は研究を進めるうちに、二つの幸運に恵まれたことで研究の方向について考え直すようになりました。一つは、二〇一二年から現在の勤務先で「メディアの歴史」の講義をするようになったことです。それゆえ、「メディアの歴史」のなかに、少年少女雑誌の歴史、および「少年」「少女」に関する知の歴史を置いてながめることになりました。さらに、初めて「メディアの歴史」に出会った大学生にわかりやすく伝えることを模索するようになりました。

 もう一つは、二〇一二年に、日本児童文芸家協会のコンクールに児童文学の作品が佳作入選して、日本児童文芸家協会に所属するようになったことです。今田先生は、本書で書かれている「女子投稿者」のように、児童文学の作品を投稿する「女子投稿者」を長年続けてきました。そして、日本児童文芸家協会に所属したことをきっかけに、日本児童文芸家協会の雑誌である『児童文芸』に、「児童雑誌の歴史」を連載することになりました。そのため、「児童雑誌の歴史」のなかに、少年少女雑誌の歴史、および「少年」「少女」に関する知の歴史を置いてみることになりました。さらに、年齢も職業もさまざまである日本児童文芸家協会の会員にわかりやすく伝えることを模索するようにもなりました。

 今田先生は、この二つの幸運をきっかけに、少年少女雑誌の歴史、および「少年」「少女」に関する知の歴史を、さまざまな読者に向けてまとめてみたいと思うようになったのです。

本書の構成

 本書は全Ⅲ部構成です。第Ⅰ部では、少年少女雑誌がどのように誕生したのかを明らかにします。第一章では、「少年」のメディアがどのように誕生したのかを、第二章では、「少女」のメディアがどのようにして誕生したのかを、第三章では、「少年」「少女」のメディアがどのようにして「少年」「少女」の意味を明確にしたのかをそれぞれ検証し、あわせて、それぞれの背景についても考察します。

 第Ⅱ部では、少年少女雑誌における「少年」「少女」に関する知が、それぞれどのようなものであったのか、そして、少年少女雑誌における「少年」「少女」に関する知が、それぞれどのように変遷したのかを明らかにします。第四章では、『日本少年』『少女の友』の少年少女詩の「少年」「少女」に関する知がそれぞれどのようなものであったのかを検証し、第五章では、『日本少年』『少女の友』の通信欄・文芸欄の「少年」「少女」がそれぞれどのようなものであったのかを確かめます。第六章では、『少女の友』の抒情画・伝記・少女小説の「少女」に関する知がどのようなものであったのか、そしてそれがどのように変遷していったのかを検証します。第七章では、『日本少年』の抒情画・伝記・少年小説の「少年」に関する知がどのようなものであったのか、そしてそれがどのように変遷していったのかを確かめます。

 第Ⅲ部では、少年少女雑誌がどのように変遷したのかを明らかにします。第八章では、一九二五(大正一四)年前後、「少年」「少女」のメディアがどのように変容したのかを、第九章では、総力戦によって、「少年」「少女」のメディアがどのように変容したのかを、第一〇章では、戦後、「少年」「少女」のメディアがどのように変容したのかをそれぞれ検証します。

本が出来上がるまでの多くの支え

 本書の刊行にあたり、各出版社さん、図書館さん、文学館さんには、多大なるお力添えを頂戴致しました。

 『穎才新誌』をはじめ、『少年世界』『少女世界』『日本少年』『少女の友』『少年倶楽部』『少女倶楽部』『ジュニアそれいゆ』など、歴史ある少年少女雑誌の表紙絵をたくさん掲載させていただくことができました。1点1点が、素晴らしい作品です。

 また、本書のカバーには、中原淳一先生の作品(『少女の友』1939年12月号表紙絵)を掲載させて頂くことが叶いました。中原先生の作品の美しさに心を奪われて、本書を手に取って下さる読者の方も多いと思います。

 今田先生のご研究の成果とあわせて、それぞれの作品も楽しんで頂けたらと思います。

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