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『悪のいきもの図鑑』 虫にも昼ドラのような修羅場あり!

記事:平凡社

右/『悪のいきもの図鑑』カバー 左/同P55「ガガンボモドキ
右/『悪のいきもの図鑑』カバー 左/同P55「ガガンボモドキ

『悪のいきもの図鑑』序文

 悪のいきもの、悪いいきもの、と聞いて、あなたはどう思われますか?
 「人間が悪いのはよくわかるけど、あの純粋な動物たちまで悪いなんて……」と信じられないでしょうか?
 それとも、「動物の世界って決して純粋じゃないよね。結構残酷なところがあるし……」でしょうか?
 どちらであるにせよ、この本は動物(もちろん人間も含め)をとても冷めた目で見、真実を伝えるものです。
 「悪い」と言っても、動物をけなすとか、あざ笑うことを目的としているわけではありません。
 「悪」の背後には必ず「知恵」が存在します。「知性」と言っても言い過ぎではないでしょう。
 いきものの二大テーマは「生存」と「繁殖」。つまり、自分が生きのびることと、自分の遺伝子を残すことです。
 この「生存」と「繁殖」のため、それぞれの動物は驚くほどの知恵を発揮し、したたかな戦略を持っています。
 本書ではそういうお手並みの数々を拝見し、他ならぬ我々自身が生きるためのヒントを得ることを目指します。

 恋愛市場において、容姿、能力、年収などで異性を品定めしあうのは人間だけではありません。小さな虫や鳥の間でも、容赦ない駆け引きが行われます。

 たとえばガガンボモドキには、オスがプロポーズの際にメスにハエを渡す「婚姻贈呈」の習慣があります。プレゼントを渡されたメスは「どれどれ?」とハエの大きさをチェック。

 大きいハエを捕まえられることは、オスの能力の証明なのです。

 合格点のオスには交尾時間を長くとり、いまいちなオスは5分未満。5分という時間の長さにも根拠があり、巧みな計算のもと、交尾に至っています。

 オスも値踏みされてばかりではありません。なんと、交尾がおわるやいなや、メスにあげたハエを奪い戻し、他のメスを口説くためにリサイクルするそうです(最悪!)。

 そんなオスにメスのふりをして近づき、プレゼントを強奪する輩もいるのだから、虫の世間も鬼ばかりです。

右/『悪のいきもの図鑑』P71「ルリオーストラリアムシクイ」 左/同P135「カッコウのヒナ」
右/『悪のいきもの図鑑』P71「ルリオーストラリアムシクイ」 左/同P135「カッコウのヒナ」

 ほかにも「エサをみせびらかし、交尾が終わらないと渡さないサンショウクイ(鳥)」や、「睾丸をちぎってでもメスをナンパするヒメグモ」など、さまざまな悪知恵を働かせるいきものが登場します。「どうぶつさん気分」が人気のイラストレーター、もじゃクッキーのイラストも合わせて、ぜひ本書をお楽しみください!

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