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情報というものは時代とともにある 現代の情報の理論と技術についてを学ぶ「情報科学入門」

記事:朝倉書店

あらゆる分野で情報技術が利用されている現代
あらゆる分野で情報技術が利用されている現代

先に技術ができ、その後「何に使おうか」と世界中で考えはじめている現代

 現代の情報の特徴は、「情報技術がその利用に先行し始めた」ということである。

 2020 年正月の日本経済新聞第三部「5G の出番です」は、「NTT ドコモとKDDI、ソフトバンクの携帯大手3 社がいよいよ次世代通信規格『5G』の商用サービスを始める。」という言葉で始まっている(※1)。そしてその中の記事は、「5G を使って一体どんなことができるのか。大容量のデータを瞬時に送れる次世代通信の活かし方について、世界 が知恵を争っている。」と報じている(※2)。

 つまり、先に技術ができて、その後から「何に使おうか」と世界中で考えはじめているのである。一方、自動車に関わる情報技術で耳目を集めている自動運転も、世界中の企業がその技術開発にしのぎを削っている一方で、それをどう使えばよいのかということは未解決の課題として残ったままである(※3)。

 ほかにも,AI(人工知能)をはじめ、現在の情報技術の多くに、この傾向は見られる。「必要は発明の母」という言葉が、現代の情報の分野では必ずしも当てはまらないのである。そして情報というものは時代とともにある。

情報技術を人々のためにより良く使うためには
情報技術を人々のためにより良く使うためには

情報および情報の理論と技術の本質を理解すること

 情報に関わる者として、この現実にどのように向き合えばよいのであろうか。その答えは単純である。情報および情報の理論と技術の本質を理解し、それを人々のためにより良く使う能力を身に着けることである。

 たとえば、これから情報技術者になろうとしている人々は、情報の理論や技術について理解することはもちろん、それらを人々の幸せのために使えるよう社会的素養や時代的理解も身に着けている必要がある。

 一方、情報以外の理工系、生命系、あるいは人文・社会科学などのあらゆる専門の人々も、自分の専門を現代の社会で実践していくためには情報の理論や技術を習得している必要がある。以上のことを考え、本書をまとめた。

情報科学分野の人々以外も情報の理論や技術について理解している必要がある
情報科学分野の人々以外も情報の理論や技術について理解している必要がある

情報というものは時代とともにある

 執筆にあたり、まず、「情報というものは時代とともにある」ということをよく理解してもらうために、客観的な統計データで定量的な変遷を示すなどの工夫をした。

 また、「情報および情報の理論と技術の本質を理解し、それを人々のためにより良く使う能力を身に着ける」ことを目的として、本書で扱う範囲を情報の本質的な内容に絞り、その内容については、図や例を用いて考え方を十分に理解できるように解説した。

 この本を読んでくださる方々が、いまの時代を見つめ、情報の理論と技術とそれらの効果的で正しい利用法について理解し、世の中の人々の暮らしや活動を幸せで豊かなものにすることに貢献していただければ、筆者は心からありがたく感謝申し上げる次第である。

参考文献
[※1]5G の出番です,日本経済新聞,元旦第三部,第1 面,2020 年1 月1 日.
[※2]村山恵一;デジタル感覚を磨け,日本経済新聞,元旦第三部,第1 面,2020 年1 月1 日.
[※3]Rodney Brooks;How to bet on tech, A few key questions can help you distinguish winners from losers, IEEE Spectrum, November 2018, pp. 44-49.

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