別冊太陽『茨木のり子 自分の感受性くらい』凛としてあり続けた詩人の生涯を読み解く
記事:平凡社
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別冊太陽『茨木のり子 自分の感受性くらい』は、茨木のり子の生涯を節目ごとに章立てした評伝「凛としてあり続けたひと」と合わせ、利発だった少女時代から青春時代、結婚生活、晩年までのアルバムの写真、生前の生原稿や日記帳と手紙など自筆資料などをふんだんに掲載し、より立体的に彼女の詩の世界をとらえられる構成となっている。
たとえば、青春時代に敗戦を迎えたことを詩にした代表作「わたしが一番きれいだったとき」と合わせ、見合い写真として撮影された21歳の時の写真が紹介されています。
夫・安信への想いを赤裸々につづった詩稿は死後に発見され、詩集『歳月』に収められた。夫婦の思い出の記録したスナップ写真は、詩にこめられた想いをより鮮やかにしてくれる。
また、彼女の暮らしぶりが残された自宅も、新たに撮り下ろして紹介。そのていねいな暮らしぶりは、死後もなお、多くの人のあこがれの対象となっている。
詩集『倚りかからず』で世に広く知られるようになった茨木のり子の心打たれる言葉の数々は、彼女の生きた時代や暮らしぶりと合わせて読むことで、さらに理解が深まるはずだ。
凛(りん)としてありのままに生きた茨木のり子。彼女のように生きることは難しいかもしれないが、その詩を読み、その生き方をたどってみれば、私たちはもっとシンプルにまっすぐに生きることができるかもしれない。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
――茨木のり子『自分の感受性くらい』より