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138億年の歴史を一望する デイヴィッド・クリスチャン『オリジン・ストーリー』より【後編】

 iStock/stevecoleimages
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引き裂かれる現代世界

 だがここ数世紀の間に、異文化間の接触が増え、オリジン・ストーリーや宗教がみな、どれほどそれぞれの土地の慣習と自然環境に根差しているかが明らかになった。そうした局地性があったからこそ、グローバル化と新しい考え方の拡散によって、伝統的な知識への信頼が損なわれたのだ。自分たちのオリジン・ストーリーを固く信じている人でさえも、さまざまなオリジン・ストーリーがあり、まったく異なる内容を語っていることに気づき始めた。自らの宗教や部族や民族の伝統を積極的に、さらには暴力に訴えてさえ守るという対応を見せる人もいた。だが、たんに信仰や信念を失い、それに伴って自分の立場がわからなくなり、森羅万象の中で自分がどんな位置を占めているかという感覚を失う人も多かった。アノミー、すなわち、あてどなさや意味の欠如の感覚、ときには絶望感さえもが浸透し、20世紀の文学や芸術、哲学、学問のあれほど多くを特徴づけた理由も、そのような信頼の喪失を考えれば説明しやすくなる。多くの人はナショナリズムのおかげでいくばくかの帰属意識を抱くことができたが、地球全体がつながった今日の世界では、ナショナリズムは特定の国の中で国民を結びつけるそばから、人間社会を引き裂くことは明らかだ。

私たちのための物語

 私は楽観的な信念を持って本書を書いた。私たち現代人は慢性的な分裂と意味の欠如の状態に陥ることを運命づけられてはいないと信じて。現代という創造的な大嵐の中で、新しいグローバルなオリジン・ストーリーが現れつつある。それは、従来のどんなオリジン・ストーリーにも劣らぬほど意味と畏敬と神秘に満ちているが、多くの学問領域にまたがる現代の科学の学識に基づいている。その物語は完成には程遠いし、豊かに生きる術や持続可能な形で暮らす術について、古いオリジン・ストーリーの見識を取り込む必要があるかもしれない。だが、その物語は知る価値がある。なぜならそれは、入念に吟味された情報と知識から成るグローバルな遺産を拠り所にしており、世界中の人間の社会と文化を受け容れる、初めてのオリジン・ストーリーだからだ。その創出は集合的でグローバルな事業であり、それはブエノスアイレスでも北京でも、ラゴスでもロンドンでも通用する物語であるべきだ。今日、大勢の学者がこの現代版のオリジン・ストーリーを構築して語るという胸躍る課題に取り組み、その物語に(あらゆるオリジン・ストーリーと同じように、ただし今日のグローバル化した世界のために)どんな指針を提供してもらえばいいか、どうすれば目的を共有しているという感覚を与えてもらえるかを模索している。

 前述のように、宇宙の歴史を教えるという試みを私自身が始めたのは1989年だった。そして1991年には、自分がしていることを言い表すために、「ビッグヒストリー」という言葉を使いだした。その物語の全貌が少しずつ見えてきたときになってようやく、新たに出現しつつあるグローバルなオリジン・ストーリーの主要な筋の数々を、自分がそこから引き出そうとしていることに気づいた。今日、ビッグヒストリーは世界のさまざまな地域の大学で教えられており、ビッグヒストリー・プロジェクトを通して、何千もの高校でも教えられている。

 私たちは21世紀のグローバルな重要課題や機会に取り組むなかで、過去をこのように新しい形で理解することが必要になる。本書は、この壮大で精緻で美しく感動的な物語の最新版を語るという、私の試みにほかならない。

(『オリジン・ストーリー』より抜粋)

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