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メアリー・ビアード『舌を抜かれる女たち』 「嫌ならブロックすれば?」は的外れなお説教

『舌を抜かれる女たち』(晶文社)

 これと同じ声とジェンダーの問題が、“ネット荒らし(インターネット・トロール)”や、悪口から殺害予告まで、オンラインで伝わってくる敵意にも絡んでいます。インターネットによる嫌がらせについて、偉そうに一般化するのは注意する必要があるでしょう。それはいろいろな形で現れるし(たとえば、ツイッターで投げかけられる言葉と、ネットニュースのコメント欄に書かれる言葉とでは、かなり性質が違います)、性差別主義者からのただの“不快な”悪口と、犯罪的な殺害予告とはまったく別です。十代の娘や息子を亡くして嘆き悲しむ親からさまざまな種類のセレブまで、ありとあらゆる人たちがターゲットになります。正確な数値は場合によって変わりますが、はっきりしているのは、実行者は女性より男性のほうが多く、女性をはるかに標的にしがちだということです。卑近な例で恐縮ですが(それに、私なんかよりはるかに苦しんでいる女性がいるはずです)、私がラジオやテレビに出演するたびに、婉曲的な表現を使えば「不適切に敵意ある」反応――言い換えれば、正当な批判とか、正当な怒りとさえ言えないような反応――が寄せられます。

(中略)

 でも、女性が受ける侮辱や脅迫を調べれば調べるほど、ここまで私が話してきた古典的なパターンにまさに当てはまるような気がしてくるのです。まず、女性としてどういう路線を取ったとしてもそれに関係なく、伝統的に男性のテリトリーとされるところにあえて足を踏み入れれば、どのみち嫌がらせをされます。相手を刺激するのは、あなたが何を言ったかではなく、単純にあなたが発言したという事実なのです。それは脅しの内容そのものも同じで、レイプしてやる、爆弾を仕掛けるぞ、殺してやるなど、決まりきった文句ばかりです(それなら安心じゃないかと思うかもしれませんが、だからといって真夜中にこれが送り付けられて怖くないということにはなりません)。でも、それに続く言葉を細かく見ていくと、女性を黙らせようという意図が見え隠れしています。「黙れ、くそアマ」というのはあちこちで見かける常套句です。あるいは、女性のしゃべる能力を奪うことを誓うもの。私は、「おまえの首を切り落として、それを犯してやる」というツイートをもらったことがあります。あるアメリカ人ジャーナリストを脅していた何者かのツイッターアカウントは、“首ナシ雌豚”という名前でした。別の女性は、「舌を引っこ抜かれちまえばよかったのに」とツイートされました。

 こういうあからさまに攻撃的なやり方で、男たちの会話に女を入れまいとしている、あるいは締め出そうとしているわけです。この手のがむしゃらなツイッター総攻撃(ほとんどはただそれだけです)と、下院で女性議員が話しだすと男性議員たちが大声で野次り、発言そのものを聞こえなくする事態とのあいだには、うっすらとつながりがあることにやはり気づくでしょう(アフガニスタンの議会では、女性の発言を聞きたくないとき、単純にマイクのスイッチを切るようです)。皮肉なことに、こういう目に遭った女性が善意でよく勧められる解決策は、まさに攻撃者たちが望んでいた結果をもたらします。つまり、口をつぐんでおけ。「言い返さないほうがいい。相手を注目の的にするな。それこそまさに連中が望んでいることだ。ただ黙って“ブロック”すること」と言われます。「歯向かうつもりか? それができないなら黙ってろ」という女たちがよく聞かされた大昔のアドバイスが甦ったようでぞっとします。このままでは、いじめっ子たちが大手を振って、校庭を独り占めするおそれがあります。

(『舌を抜かれる女たち』より抜粋)