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スピードを伸ばす正しい走り方 『99%の人が速くなる走り方』より

記事:筑摩書房

original image:msanca / stock.adobe.com
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 さあ走ろう! って簡単にいいますが、「全力で走る」を毎日繰り返すうちに、身体は徐々に適応していきます。ある程度、自分なりの走り方に慣れてしまったら、そうそう簡単に速くなりません。そういうものです。もう一度、丁寧に話しますね。

練習を始める、毎日繰り返しダッシュをする
 ↓
最初は速くなる
 ↓
しだいに身体は強くなる
 ↓
さらに耐久性もつく
 ↓
しかし速さは、あまり変わらなくなる
 ↓
身体が大きくなったら、体重増で遅くなることもある

 三段論法どころか、六段論法ですね。この六段論法ですが、スポーツの世界では、案外よくあります。実際に、アメリカのある大学フットボール部の論文では、筋力がついた、体重も増えた、パワーも上がった、しかし40ヤード(約37m)の走力は変わらない、と発表されました。ボクはアメリカの大学で具体的にどのような目的をもって、どう練習をしているかは知りませんが、スピードはつかないなんて、そんなことはありません。断言します。正しい認識の下で練習をすれば、体重も増える、パワーも上がる、30m、50mの走力もつきます。

 ボクが指導している大学生(國學院大學 野球部)のデータがあります。このデータは、縦断的に、個人の数値を1年生から4年生まで追ったものです。測定自体は、気象条件、ストップウォッチ計測によるバラつき、モチベーションの変化など、予想できる誤差があります。誤差によって信頼性を疑う余地は残されていますが、誤差の範囲をはるかに超えるほど、速くなります。

 4年間の50m走測定で、それぞれの選手が在学中合計7回の測定でマークした最低の記録を平均すると、6.63秒でした。一方、4年間の最高記録の平均は6.18秒です。その差は0.45秒です。全体の平均そのものを学年ごとに調べると、1年→2年→3年→4年、と学年が上がるに従って伸びています。

 一方、縦断的に(個人個人のデータで)調べると、1年生の時に最低記録を出した学生が70%、2年生で最低記録を出した選手がおよそ17%いました。合計して1、2年生のどちらかで最低記録を出した割合は、87%でした。

 また、50mの最高記録がどの学年で出現したかを調べたところ、3、4年生でマークする割合は、80%でした。目的と手段が明確に適合していれば、このような結果が必然的に導かれ、99%の大学生が在学中に50m走の記録を伸ばします。

 つまり、スピードは伸びます。理念と練習の仕方をしっかり持ってさえいれば、走る練習によって、ほぼ誰でも、スピードは伸びます。

 すべきことは、以下の4点です。

(1)時間と手間をかける
(2)適切な考え方に基づく
(3)ほとんどが全体指導だけ(個別指導はほとんどしない)
(4)感性を大切にする

 あんまり難しそうじゃないですよね。でも、とんでもなく深い話が待っています。どんなことに、どのくらいの時間と手間をかけるのか。

 適切な考え方とは、いったい何か、どのくらいあるのか。

 どんな全体指導を受け、どのように進行するのか。

 感性って、具体的には何なのか。

 そろそろお分かりだと思います。誰もが速く走るための秘訣は、100mダッシュを10本走れ、ではなかったのです。「どのように走るのか」を明確にすることで、生きた練習になります。

「もっと速く走れ!」だけでは、あなたの持って生まれた能力を最大限発揮できません。

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