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iPS細胞からAI、キャッシュレス、ポケモンまで 科学技術の倫理『世界思想』47号

記事:世界思想社

『世界思想』47号(世界思想社)
『世界思想』47号(世界思想社)

科学者の倫理

 野家啓一さん「リスク社会における科学技術倫理」

「不作為による被害の拡大は科学者や行政官の責任」――科学技術倫理の2つの側面を、内部倫理(=職業倫理)と外部倫理(=社会に対する責任)として明示したうえで、科学技術が政治経済と絡まりあう現代社会の問題について提言します。

池内了さん「科学者の倫理と役割」

 公益性、普遍性、無私性など科学者の持つべき規範が変質し、成果の私物化、競争主義・商業主義の徹底が進んでいます。お金のかかる巨大な研究が本当に市民のためになるのか?誰もが参加できる等身大の科学を提唱します。

仲野徹さん「医学・生命科学研究における研究倫理」

 研究不正が後を絶ちません。研究者が意図的にそんなことをするはずがないにもかかわらず。ではなぜ起こってしまうのか、自身の失敗経験も赤裸々に告白しつつ「研究倫理」を語ります。

鈴木和歌奈さん「小文字の倫理――知ることとケアすること」

 子育てするおかあさんと実験に必要なiPS細胞を育てるiPSソムリエは、似ています。細胞を知り、ケアし、考え続けることで現われる「小文字の倫理」が、新たな思考を開きます。

 島薗進さん「宗教文化と生命観――いのちを作りかえる科学技術を制御する倫理」

 遺伝子改変に歯止めをかけられるのは、アジアの宗教文化を継承するわたしたちだった?長期/短期、つながり/個という対比で「いのちの始まり」をめぐる倫理観を考えます。

 歴史と想像力

佐倉統さん「科学技術は暴走しているのか?」

 科学技術は、大昔からずっと暴走してきたのかもしれない。AIやロボットなどの先端技術は、過去の技術とどう違うか?ロボットやAIを友とするために、何が拠り所となりうるのか?小説・映画・マンガにもふれながら考察していきます。

長山靖生さん「ゴジラに見る日本人の科学技術観、倫理観」

 『シン・ゴジラ』に出てくる異端の生物学者・牧悟郎と詩人・高村光太郎が共有する、科学時代への「挑発」とは?「期待」とは?――放射能を吐き、都市を破壊する怪獣ゴジラの姿を通して、日本人の科学技術観を考えます。

戸谷洋志さん「科学技術と想像力――ビクティニとトピカ」

 ポケモンのキャラクター「ビクティニ」は、原子力をめぐる現実の問題とは何の関係もない?このエッセイを読めば、科学技術の問題を克服するのに想像力が鍵を握ることがわかります。ポケモンからヴィーコへの展開は圧巻。

児玉聡さん「誰の幸福のために?――ヒト胚のゲノム編集をめぐって」

 どんどん発達していくゲノム編集技術。親が子どもの幸福のためにゲノム編集を行うことは認められるのか?我が子の将来を思えばこそ……多様なケースの考察を通して、ゲノム編集利用をどのように規制すべきか探ります。

陣野俊史さん「科学的『正しさ』の権威とゆくえ――サッカーのVAR導入から見えるもの」

 マラドーナの「神の手」のように、サッカーにおいて誤審とは神話でした。でも、ビデオ判定の導入で、もはや神話は存在しえません。そこから、サッカーと、社会の未来を想像します。

福永真弓さん「リスクがつくる肉食のかたち」

 いま話題の植物性人工肉は、ヘルシーで、肉食より安全だと考える人もあります。気候変動のリスクを考えれば、肉→人工肉への移行は不可避かつ理想的な変化?リスクに対処することが社会をどう変容させるのか、食を通じて想像してみませんか。

藤原辰史さん「重装備社会の農業」

 畜力で営まれていた農業は、蒸気機関、ついで内燃機関の登場によって、石油、化学肥料、農薬に依存する重装備農業となってしまった。農業に必要なのは太陽と水と土――この原点に戻り、環境に負荷をかけない小規模軽装備の農業を提案します。

来たるべき世界

若林恵さん「さよなら現金。さよなら民主主義」

 キャッシュレス化が進むと、電子的な記録が残り、現金で保証されていた匿名性が担保されず、民主主義の基盤が揺るがされる!デジタルマネーのイヤな感じをクリアに説明する、都市論であり、民主主義論にもなっている、ユニークな貨幣論。

高野麻子さん「生体認証技術の発展と未来――認証される『私』とは誰なのか」

 指紋認証や顔認証など生体認証技術は便利なテクノロジーか?それとも抑圧や差別の道具か?人を動くモノとして管理する技術の本質を、歴史をさかのぼり明らかにしたうえで、可能性やリスクとどう向き合っていくべきか考えます。

斉藤健一さん「ハッカーが活躍できる社会に向けて」

 悪いハッカーが暗躍する一方、彼らを取り締まる「ホワイトハッカー」が法に縛られていいのか?現状のコンピューター技術を取り巻く環境について、考えさせられます。

橳島次郎さん「楽園前夜または『中間世代』を生きる――文明論としての科学技術の倫理」

 人類が地球を出て別の惑星をめざすとき、その宇宙船内で生まれ死んでいく「中間世代」は、目的の星に向かうのか、それとも永遠に宇宙を飛び続けるのか?SF小説・アニメをおりまぜながら、科学技術文明の未来へつながる倫理的問題に迫ります。

澤井努さん「体外で作製される脳は意識を持つのか――ヒト脳オルガノイド研究の倫理」

 iPS細胞やES細胞を用いて、脳の形成過程を体外で模倣しながら作製される、ヒト脳オルガノイド。新生児の脳波に似た波形が検出されたという報告も含め、研究の現状と展望を整理し、これが提起する問題を紹介します。

池上高志さん「ALIFEと生成される倫理」

 『ブレードランナー』のレプリカントは、自分の自律性が侵されるのを恐れて所有者から逃げます。所有からの逃避を他人にも認めれば、アンドロイドや人工生命(ALIFE)に特有の新しいタイプの倫理が生成される!倫理問題にコペルニクス的転回を迫る斬新な論。

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『世界思想』47号は、全国の大型書店の無料配布コーナーなどで入手いただけます。

また、送料がかかってしまいますが世界思想社から直接お送りすることも可能です。

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