1000本ノック、書き出し紹介… 毎日ツイッターで本情報を伝える筑摩書房 出版社のウェブ発信(上)
記事:じんぶん堂企画室
記事:じんぶん堂企画室
筑摩書房は2018年2月からツイッターで、企画「#ちくま1000『本』ノック」を始めました。
野球のノック練習に見立てて、自社の既刊本を毎日1冊以上、合計1000冊を紹介していくという企画です。書影、目次、著者プロフィールなどの画像とともに、短い紹介を投稿し続け、2年半をかけて今年8月に完結しました。過去の投稿内容は同社ホームページでも読めます。
そして8月からは、後継企画「#ちくまくら365」を始めました。今度は毎日1冊、本の書き出し部分(=まくら)の画像だけを投稿するという企画。本の表紙やタイトルもありません。先入観なしに本に出会ってもらうのが狙いで、興味を持った人は、ツイートに記されたURLをクリックして、同社のホームページで書誌情報を読むことができます。
いずれも本そのものの紹介に徹した投稿企画です。
「#ちくま1000『本』ノック」を担当した同社営業部宣伝課の尾竹伸さん、「#ちくまくら365」を担当する同課の濱中祐美子さんにお話を伺いました。
――「#ちくま1000『本』ノック」を始めたきっかけを教えてください。
尾竹 ツイッターを運用していて、内容が新刊と話題書ばかりになっていることに問題を感じたのがきっかけです。筑摩書房にはロングセラーがたくさんあるので、それらの情報を発信していきたい、と思いました。
しかし、ロングセラーは、新刊本と違って「こういう本があります」と単純に紹介しても、なかなか目にとめてもらえません。自然に紹介できるスタイルはないかと、ずっと考えていて思いついたのが「#ちくま1000『本』ノック」です。
ツイッターはタイムラインに情報がばーっと流れてきますよね。書店の棚を歩き回って、「あ、こんな本があるんだ」と手にとるのと似た体験をツイッター上で提供できないかな、と考えました。
書店で本を手にとる動作って、表紙を見て、目次を見たり、著者の経歴を見たり、内容の紹介見たり……というものだと思うのですが、それを一つのツイートの中で体験してもらえたらいいな、と。
――毎回同じフォーマットの投稿で、本の内容の紹介に徹していましたよね。
尾竹 毎日1冊は必ず紹介したかったので継続性も大事でした。いろいろな仕事をする中での投稿なので10~15分以内で1投稿できるやり方でないと続かない。なので、最初にある程度のフォーマットを決めました。
――いわゆる「中の人」感もありませんね。
尾竹 ブランドイメージや、コンプライアンスへの留意のほかに、複数人で運用していることも理由です。社の公式アカウントとして、意図しないところでずれが生じてしまうのが嫌で。
――タグをつけて読者が「代打」したときもありました。
尾竹 2019年6月18日、79年目の創業記念日に読者に「代打」を呼びかけたのが最初です。そういう、読者に呼びかけるスピンオフは3回やりました。2回目は「ダブルプレー」。筑摩書房がノックを打った本に関連する本の投稿をよびかけました。筑摩書房以外の本も対象にしたので、他社も参加してくださいましたね。3回目は、ノック完結の前日の「代打」です。一番「いいね」が付いた代打者の方にプレゼントを差し上げて締めくくりました。
――「#ちくまくら365『本』ノック」はどういう経緯で始めたのですか。
濱中 1000「本」ノックが終わる1カ月前くらいに、後続の企画の相談を始めました。
尾竹 自分たちがやりたいことは、ツイッター上での本との出会い方を考えることなんだよね、と、みんなで話したんです。どんな出会い方があるかいろいろ出し合っている中で、濱中が「まっさらな状態で出だしを読んで、いいなと思う出会いがあるんじゃないか」って。
濱中 個人的に、本を開いて最初の雰囲気で「あ、この本好きだな」って思うことがよくあったんです。なので、毎朝、自動的に本の書き出し(=まくら)の画像が目の前にとびこんできたらどうかな、と「#ちくまくら365『本』ノック」を始めました。
――投稿する本は毎日どんなふう選んでいるんですか?
濱中 時事的なことに絡めることもありますし、そのときの気分で選ぶこともあります。
先日、尾崎翠の小説を投稿したのですが、書き出しが秋から冬にかけての季節の表現なんですね。今の時期にちょうどぴったりだと思って。「すぐに買った」とリツイートしてくださった方がいて、うれしかったです。
――「#ちくまくら打ちかえし」もありますね。「#ちくまくら365『本』ノック」をリツイートして、画像の書き出しが何の本だったのかを紹介しています。
濱中 打ちかえしで「#ちくまくら365『本』ノック」と逆の出会いを作ってみました。ちくまくらは、書名も書影も知らない状態で書き出しを読んでいただく。打ち返しは「書名は知っているけど読んだことない」とか「昔読んだけど出だしはどうだったっけ」とか思っている本との出会いを提供しています。
尾竹 大人になるほど、自分の趣味以外のものに手をのばす機会が減ってきますよね。毎朝送られてくる本の書き出しを通勤電車の中で読んでみる。そんな、毎日の習慣として、本との出会いを提供できたらいいな、と思ってます。
筑摩書房Twitter:@chikumashobo