浴室のカビ退治 〜シャワーは50℃・5秒で!
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
カビ退治は大変だなぁ、と思っている方が大勢いる。しかも浴室はカビだらけと感じる読者もいるだろう。本書「第7章カビを防ぐ」(p.109~128)でカビ制御をまとめている。確かに60℃以上の高温にするとカビは死滅することも述べている。ところが、である。家庭でしかもカビの発生しやすい浴室でもっと具体的なカビ退治ができないだろうかといった相談は絶え間ない。そこで「もっと具体的なカビ退治法がないだろうか」を考えることにした。ちょうどそのときNHKの科学番組担当デイレクターが「浴室のカビ退治」をテーマに協力してほしいと相談にみえた。
ここから、生活科学者としての活動が始まった。今までも「カビ退治はこうしては」と、もっともらしく?お話しし番組担当者を納得させてきたが、改めて「だけどそのカビ退治って誰もが簡単にできるの?」ということに気がついたのである。もっとシンプルで誰でもできそうなことを考えることにした。その挑戦が始まってしばらくして「カビを生えさせないことが重要だから、完全でなくとも死滅させることができれば、あとは生活習慣で継続すればよいのでは」と柔らかく考えることにした。ちなみに浴室なので高熱はだめ、強い薬剤は操作が面倒、換気量は各家庭で異なる、乾燥は言うは易く行うは難しで皆さんどこまでできるかとなると…3日坊主になりかねない。そこで浴室ではシャワーを使うことに閃き、このシャワーで何かできないだろうかという試行錯誤が始まった。あまり頭を固くせず、湯温度40℃からやや熱い55℃まで2~3℃刻みで実験を繰り返してみた。
そうして遂に、火傷はしない程度の湯温度=50℃のシャワーをあてると5秒で表面のカビは死滅、90秒で内部に侵入したカビも死滅することがわかった。驚いた! 浴室のカビの多くはクロカビ(クラドスポリウム)である。またそれ以外にみるカビはほとんどクロカビと性質が同じで湯には弱いこともわかった。50℃・90秒はクロカビが内部に生えたと想定した場合である。皆さんは内部にふか~く入り込むと思うだろうが、それは誤解だ。せいぜい0.3mmくらいまでしか入ることができない。1mmもいかない。そこであえて1mmまで50℃の湯が浸透する時間を測定した。それが90秒である。
というわけで、浴室のカビ退治はカビの生えたところは湯シャワー50℃・90秒あて、その後は1週間程度の間隔で50℃・5秒シャワーしましょうとなった。
こうして浴室のかび退治は「シャワー50℃・90秒、その後1週間ごとに50℃・5秒」が生まれた。