1. じんぶん堂TOP
  2. 哲学・思想
  3. レイシズム・哲学・戦争・歴史・自由 この夏は人文書を読もう!「じんぶん堂」おすすめの人文書5選

レイシズム・哲学・戦争・歴史・自由 この夏は人文書を読もう!「じんぶん堂」おすすめの人文書5選

記事:じんぶん堂企画室

この夏は人文書を読もう
この夏は人文書を読もう

この記事で紹介する本

「人文書を読もう!」キャンペーンの詳細はこちら

ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?

ロビン・ディアンジェロ 著、貴堂嘉之 監訳、上田勢子 訳/明石書店

ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?
ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?

 本書は米国における人種上のマジョリティ、つまりは白人に向けて書かれている。その内容は、社会的な「特権」をもつ白人は多かれ少なかれレイシズム(人種差別主義)をすでに内面化しており、自覚し続ける以外にそれを緩和できるすべはない、という厳しいものだ。

 ただ、大きく言って男女間で、本書の受け止め方は異なるかもしれない。本書の指摘の大半は、男女間の権力関係においても当てはまるからだ。では、日本社会のマジョリティである日本人が本書を読むことは何を意味するのか。また日本人の男女間にはいかなる読みの相違が生じうるのか。そして日本人は白人との人種的関係性を、どう整理して理解するのか。

 今回、装丁にはいささか挑発的に「憂いを湛えた白人女性」をあしらった。これは一義的には白人女性が、自分の涙をレイシズムの隠れ蓑として利用する本文の事例を表したものだが、写真の女性はそうした自らのありように疑問を抱き、内省しているさまにも見える。日本の女性読者等は、この表情をどう受け止めるだろう。

 一方で、このか弱げな表情に、男性読者はどういった眼差しを向けるのだろう。セクシズム(性差別主義)にも通じるある危うさがあるとして、その指摘を男性たちは「否認」するだろうか。とすれば、そうした「心の脆さ」もまた、本書の主題の一つであると言えるかもしれない。

>日本人はなぜレイシズム(人種差別主義)に向き合えないのか?――『ホワイト・フラジリティ』の射程

哲学の女王たち――もうひとつの思想史入門

レベッカ・バクストン、リサ・ホワイティング 編、向井和美 訳/晶文社

哲学の女王たち もうひとつの思想史入門
哲学の女王たち もうひとつの思想史入門

 「哲学者」ときいて、どんな名前、どんな人物が思い浮かびますか? プラトン、アリストテレス、デカルト、カント、ニーチェ、サルトル……いずれも威厳ある男性たちが並びますが、では女性の哲学者はどうでしょうか。パッと思い当たらないか、あるいは出てきても数名……? 

 本書では古今東西20名の女性哲学者に光を当て、思想や生い立ち、時代背景を紹介します。ハンナ・アーレントやシモーヌ・ド・ボーヴォワールだけでなく、中国の歴史家やイスラム法学者など、知の歴史に大きなインパクトを与えながらも、見過ごされてきた思想家たち。彼女たちの名前はこれからの新常識になるかもしれません。豊かな哲学の世界に一歩足を踏み入れるための入門書です。

>プラトン、カント、ニーチェ…… 私たちが女性哲学者の名前を言えない理由

戦争という選択――〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯

関口高史 著/作品社

戦争という選択――〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯
戦争という選択――〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯

 誰しもが無謀だと思ったにもかかわらず、なぜ真珠湾を攻撃したのか? 開戦を主導した〈主戦論者たち〉は、和平案など他の主張を抑え、明らかに「勝利」した。つまり多くの人々から支持を得ることに成功したのである。

 本書は、あれから80年がたった今、“戦犯”とされ省みられてこなかった彼らの主張とその思考にあえて焦点を合わせる。取り上げるのは当事者たちの自己弁護ではない。彼らの膨大な発言などを、最新の安全保障学(軍事学)に基づく「戦略的思考」(戦略環境の認識・戦略環境の醸成・抑止[対処])の三つの次元で整理し、各種事象の結果と原因を分析。〈主戦論者たち〉の視点から見た日米開戦の経緯を分析し、二度と戦争を起こさないための教訓を得る!

台湾海峡一九四九

龍應台 著、天野健太郎 訳/白水社

台湾海峡一九四九
台湾海峡一九四九

 1949年、国共内戦に敗れた国民党政府軍と戦乱を逃れた民間人とが大挙して台湾へ押し寄せた。その数ざっと200万。一方、50年にわたる日本の統治期を経て、「外省人」という新たな勢力の大波にのみ込まれた台湾人。互いに痛みを抱えながらこの小さな島に暮らしてきた外省人と台湾人の「原点」を見つめ直す。

 「世界で最も親日的な国」といわれる裏にどんな事情があるのか、独立か統一か現状維持かで常に揺れ動く背景に何があるのか。東アジア全域を舞台に、台湾随一のベストセラー作家が満を持して放つ歴史大作。台湾・香港で42万部超の大反響、日本でもロングセラー!

 「台湾の痛みを抱擁する、境界を越えるために。」阿古智子氏(東京大学教授)推薦
 「台湾は、複雑だ。私たちの想像をはるかに超えて。」温又柔氏(作家)推薦

自由の条件 Ⅰ 自由の価値 Ⅱ 自由と法 Ⅲ 福祉国家における自由

フリードリヒ・A・ハイエク 著、気賀健三 訳、古賀 勝次郎 訳/春秋社

自由の条件
自由の条件

不穏な世界情勢に、いまこそ読まれなければならないハイエクの思想。久しく品切れ状態がつづいておりましたが、このたび名著の誉れ高い3巻本のパワフルな『自由の条件』が普及版として、お求めやすくなりました。徹底した集散主義批判に富む『隷属への道』を読了された方にはまたとないチャンスです。「自由の条件」と「法の支配」の関わりを詳述したハイエクの代表作をじっくり読み込んで下さい!

「自由」は文明の進歩にとっていかに重要か――西洋における自由の思想の変遷を辿りつつ、形骸化した法がもたらす利権政治および国家の官僚化から自由を守る方途を示し、さらに税制・社会保障・教育問題・都市計画等、公共政策を通して個人と国家のあり方を精緻に考究してゆきます。自由と国家のあるべき姿を根本から照射する問題作。

この夏は人文書を読もう! キャンペーン

 「じんぶん堂」ではこの夏、読者のみなさんにおすすめの人文書をうかがいたく、ツイッターでキャンペーンを実施しています。下記をお読みいただき、ぜひご参加ください。いただいた投稿の一部は後日、じんぶん堂で紹介する場合があります。抽選で10名様に3,000円分の図書カードをプレゼントします。

応募方法
①「じんぶん堂」公式ツイッターアカウント(@asahijinbun)をフォローする
②ハッシュタグ「#人文書を読もう」をつけて、あなたのおすすめの人文書・最近読んで面白かった人文書・この夏読みたい人文書などについて、①本の書名(と著者)②感想など一言コメントをツイートしてご応募ください。

応募締切
2021年8月31日(火)正午

結果発表
抽選結果のご連絡は、2021年9月中に当選者のみにDMで行います。あらかじめご了承ください。

ページトップに戻る

じんぶん堂は、「人文書」の魅力を伝える
出版社と朝日新聞社の共同プロジェクトです。
「じんぶん堂」とは 加盟社一覧へ