子どもから大人まであそべる! 世界のアナログゲームを知ろう
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
本書は題名の通り、日本と世界の伝統ゲームを集めた本である。ゲームという言葉には様々な意味があり、人によって受け止め方が違うと思われるので、この本で取り上げたゲームについて説明する。
ゲームと似た言葉に「遊び」がある。ほとんど同じように使われることがあるが、筆者はこのように考えている。人間の生活時間を2つに分けると、生きるために必要なものと必要でないものに分けられる。必要なものは睡眠であり、食事であり、長く生きるためには仕事などもそうである。必要でないことをする時間を余暇と呼び、そこでするものが娯楽である。読書やテレビや映画や音楽など、数多くの娯楽があるが、遊びもその1つである。その遊びのうち、「始めと終わりがあるもの」「ルールがあるもの」「勝敗があるもの」をゲームと定義している。
ゲームといえば昨今は機械で行うものが多いが、この本は人間と人間が行う、いわゆるアナログゲームと呼ばれるものを集めている。ゲームには①ストレスの解消、②非現実の体験、③利益が絡まない、といった利点があるが、アナログゲームには、さらに人と人との付き合い・コミュニケーションを図ることができるという利点がある。デジタル技術を介した場合、直接相手と向かわない点が大きく異なると言える。それにもメリットがある点は否定しない。
「遊び」は情緒を豊かにしてくれる。現実社会は人間との付き合いがあり、その仕組みは複雑である。そして人生は実は競争の連続である。他人との競争のみでなく、随所でうまくこなすこと・ミスをしないことが求められる。「ゲーム」は社会の模擬訓練になる。「遊び」 以上に社会での生き方を学ぶことができる。
一方でゲームには、①何も生まない、作らない、②面白くて時間やお金のバランスを崩すおそれがある、③熱狂して現実と空想を混同しやすいなどの欠点がある。しかし、人間と人間のゲームでは、相手があるゆえにこれらのデメリットに陥る危険も少ないといえる。
世界のどこの国でも地域でも民族でも、ゲームがあり、古代でも中世でも、もちろん今でもゲームが遊ばれている。しかし長い歴史の中には廃れてしまったゲームや滅んでしまったゲームもあり、それらも合わせれば、実に多くのゲームがあった。
昨今ではゲームは購入するものになってしまっているが、商品化したのは文明が発達してからで、元々ゲームは自然物を使ったり、加工したりして遊ぶものであった。そのようなゲームはシンプルで誰でも遊べるものである。新しいゲームなど必要ないとは言わない。しかし、ゲームの意義を考えたとき、古いゲームに意味がないあるいは必要がないということはない。むしろ伝統的なゲームの方が、道具が安く簡単に作ることができるなどのメリットがある。
この本は、古いゲームを後世に残そうという意味もこめて書かれている、人間は生活を豊かにしようとして様々なゲームを考え出し遊んできた。そういった過去の人たちの知恵を未来に伝えたいと考えているが、ゲームというのは文献だけではうまく伝わらないものである。実際に遊んでみないとわからない点も多々ある。読者には本書のゲームを1つでも多く実際に体験し、その面白さとともに伝えていって頂きたいと願っている。
(高橋浩徳『伝統ゲーム大事典 ―子どもから大人まであそべる世界の遊戯―』まえがき より)