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大人になった私たちは、絵本に何を「FIND」するのか?

記事:朝倉書店

子どもの頃のあなたは、絵本を開いて何を「FIND」していたでしょうか。
子どもの頃のあなたは、絵本を開いて何を「FIND」していたでしょうか。

絵本と「FIND」する

 本書には『絵本ものがたりFIND―見つける・つむぐ・変化させる―』といういささか不思議なタイトルをつけた。その経緯について書いておきたい。(中略)

 この本で注目したかったのは絵本と物語をめぐる活動であったから、「絵本」「ものがたり」はすぐに決まった。最後に、辞書を片手に、なにか絵本に関わる、人の主体的な行為を表す、馴染みのある単語を取り入れたいと思って選んだのが、「FIND」であった。

絵本の解釈を、他の誰かと分かち合うことで生まれるもの

 1冊の絵本であっても、読者それぞれに違う物語と出会う可能性がある。よく知られた物語も絵本になることで、あるいは翻訳されることで、表現の方法が変わり、違った世界を読者に見せることがある。作品の解釈や楽しみ方もひとつではなく、それらを他者と分かち合うことで生まれる情景や想いがある。もちろん、絵本を作ることも、自分なりのテーマや表現を見出し、それを形にするという主体的な行為である。

 そのような想いを込めて、私たちは「見つける」「出会う」という意味をもつ「FIND」を選んだ。中川淳さんが描いてくださった表紙絵のように、ぜひ海底探検に出たつもりで、本書から皆さまが必要とするものを見つけ出していただきたい。(中略)

絵本を読むということは海底探検にも似ている。
絵本を読むということは海底探検にも似ている。

「読み」に絶対はあり得ない

 「FIND」という語は、「見つける」の他に、「~だと思う」「~だと感じる」という意味を担うことがある。絵本について調べること、思考すること、意見を交わし合うことも、絵本をめぐる活動のひとつである。

 本書に収録した論考やコラムは、それぞれのフィールドで絵本と向き合う執筆者たちが、誠実に論じてくださった。しかし、執筆者の見解がどれほど確かな論拠に基づいたものでも、当然ながら「読み」の絶対はあり得ない。読んでくださった方が深く頷かれる場合もあるだろうし、全く別の解釈を見出される方もいるかもしれない。私たちはそうであってよいと思っている。読む人になにかをもたらすであろう、オリジナリティのある原稿ばかりが集められたことに心から感謝する。

 『絵本ものがたりFIND』を開いてくださった皆さまが、絵本のなかに、あるいは絵本をめぐる活動に、そして自分のなかに、新しいなにかを「FIND」してくださるだろうか。そうであれば、とてもうれしい。

(「はじめに」(今田由香・大島丈志)より)

『絵本ものがたりFIND―見つける・つむぐ・変化させる―』シリーズ〈絵本をめぐる活動〉2
『絵本ものがたりFIND―見つける・つむぐ・変化させる―』シリーズ〈絵本をめぐる活動〉2

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