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AIと人間が共存する方法とは? 齋藤孝『「日本人」力 九つの型』より

記事:筑摩書房

original image: blew_f / stock.adobe.com
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いまはAI(人工知能)が発達し、人の仕事を奪うと考えられています。そういう未来をおそれている方もいらっしゃるかもしれませんが、世界の変化に対応する「日本人」力を私たちは持っていると思います。

日本人の対応力は非常に柔軟性に優れていて、急な変化を恐れません。たとえば文部省が近代学校の学制を敷いたのが明治五年ですが、そのとき、西洋の学問一本でやると決定したのが、佐賀藩出身の江藤新平(1834~1874)と大木喬任(1832~1899)の二人でした。

当時、日本には国学や漢学もありました。彼らは漢学にも優れた知識があったのに、それをひとまずきっぱりと捨てて西洋の学問、すなわち実学で行くという方針を決めたのです。捨てるときには、以前のものを躊躇なく切り捨てられるのが「日本人」力です。たとえば新美南吉(1913~1943)の『おじいさんのランプ』は、そうした事情を詩情豊かに描いています。

やがて全国に、あっという間に小学校が一万校くらいできました。「こう決めたら、こうやるのだ」という柔軟な対応力が「日本人」力です。それがあればAIが出てきても動ずることはありません。AIを私たち全体の幸福のためにどうつかったらいいのか考えればいいのです。

経営者も自分の会社の利益を上げるだけが経営の目的ではありません。みんなが食べていける社会をつくるのが経営です。「経世済民」という言葉がありますが、まさに経営で世の中の民を潤していくのが本当の経済です。それができる人が経営者に値するでしょう。

私たちはAIを恐れすぎず、自分たちに求められている仕事をそのつどしっかりやっていき、最終的にはセンターバックやゴールキーパーさえやるという覚悟と柔軟性を持ち続けていればいいのです。そこにあるのは、長谷部誠選手のような戦術的理解力とねばり強さです。そのあたりを意識して、広い視野で見ていけば、心の安定にも役立つのではないでしょうか。

(『「日本人」力 九つの型』より抜粋)

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