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オックスフォード・国連で学んだ「他人に流されない」術(すべ) 自分の軸で生きる

記事:大和書房

『自分の軸で生きる練習』(大和書房)
『自分の軸で生きる練習』(大和書房)

ランキングに踊らされる日本人

 就活、婚活、妊活、終活…「○○活」という言葉を見るたび、どう英訳したらいいのかと悩みます。これらは日本にしかない特有の言葉だからです。

 「○○活」という言葉には、ある1つのモデルが存在していて、それこそが正解であるというニュアンスがあります。

 この「唯一無二の理想がある」という考え方は、日本人のランキング好きにも関係しているように思います。

 例えば、偏差値、人気企業、芸能人のランキングなどです。

 そんな話をしていたら、テレビ番組のプロデューサーをしている友人が、こんな話をしてくれたことがあります。芸能人が神戸牛とオージービーフの2つを目隠しして味わい、どちらが高級かを当てる日本のテレビ番組の話です。

 そして、彼はこう言いました。

 「おそらくあの番組は、米国では人気が出ないと思う。だって、美味しいかまずいか決めるのは自分だから。仮に安いほうを美味しいと思っても、別に誰も気にしないから」

 私もそれには一理あるなと思いました。

 ブラジル人の友人に、こんなことを言われたこともあります。

 「日本ではみんな太陽をオレンジ色で描くけど、ブラジルだったらピンクや緑色で太陽を描いてもいい」

 人間は社会的な生き物なので、米国人だってそれぞれの社会階層のカルチャーに従うでしょうし、ある社会階層では高級肉の味がわかる能力は珍重されるでしょう。

 ただ、ランキングがある限り、1つの指標に従った上下関係が生まれます。

 つまり「勝者」と「敗者」が作られるのです。

 私たちの社会がある一定の指標を前提とする限り、その構造は変わりません。

 ランキングがあれば、自分の頭で考えて判断しなくて済みますから、人間はある種の「秩序」というか、一見もっともらしい理由にすがって安心したいのかもしれません。

 しかしながら、そうした指標が妥当かどうか、または自分にとって役に立っているかどうかはまったく別の話なのです。

「足りない」という病

 アメリカや欧米にも有名大学のランキングが存在しますが、それ以外の評価軸や選択肢がもっと存在します。日本人はよく自信がないと言われますが、それにもこのたった1つの評価軸を信じ、自分の評価を委ねてきたことが関係していると思います。

 なぜなら、ある1つのモデルを理想にしていると、いつも何かが「足りない」からです。

 ある理想像のもとでは、私たちは常に「減点評価」の対象になります。

 すると自分の能力や努力が足りないという強迫観念に急き立てられ、いつまでたっても満たされることがありません。

 しかも、SNSが広く普及している現代は成功者の華やかな生活が目に入りやすく、作られた理想像と自分を比較して、自信をなくしたり、焦燥感に悩まされたりしやすい環境にあります。

 なにより、残念なことに、自分に与えられた才能や経験を誰もが過小評価してしまいます。

 社会の評価軸に合わないというだけで、自分の持っている資質を強みだと思えないのです。

 1つの指標や理想像に価値を見出し続ける限り、その構造は続きます。

 そこから解放されるためには、他人がつくった指標や理想を追うのではなく、「自分にとっての指標」「自分はこれでいい」と思える「自分の軸」を持つことです。

 それこそ、「美味しいかまずいかは、自分で決めればよい」というスタンスは1つの方向性です。

 そこまで極端な言い方をしなくても、ある物事に対してどう思うかは自分が決めればいいのです。

植え付けられた「理想像」を捨てる

 そして、社会やメディア、学校や親から植え付けられた次のような「理想像」に自分が無意識に囚われていることにまず気づくことです。

 例えばこういうものです。

・男性は「弱み」を見せてはいけない。
・女性は若くなければいけない。
・いつもいい成績をとらなければいけない。
・絶対に失敗をしてはいけない。
・周囲の人に賞賛されなければいけない。
・やるからには成功しなければいけない。
・もっと痩せなければいけない。
・母親は常に子ども思いで優しくなければいけない。

 まずこうした自分の中の植え付けられた「理想像」に気がつくことが改善のための大きな一歩です。

 大抵、こうした信念は、自分の中で自動的にどんどん発生していて、無意識に影響していることすら気がつかないからです。

 これに気づき、そして「自分の軸」に書き直していくことが大事なのです。

 著者はオックスフォード大学で学び、国連の職員としてニューヨークや南スーダンでも活動を行なってきました。そういった活動の中でも、求められているのは、形式的な意見よりも、「自分自身の体験や考え」であったのです。

 コロナ禍で、様々な情報があふれる中で、他人や世間からの情報に踊らされないためにも、胸に刻んでおきたい考え方ではないでしょうか。

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