無限の模様と色彩を持つ、悠久の時が生んだ自然のアート 『縞と色彩の石 アゲート』
記事:創元社
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アゲート(agate)は、和名でメノウ(瑪瑙)と呼ばれる石だ。とてもありふれた鉱物で、石に興味が無くてもメノウという名は耳にしたことがある、という人は多いと思う。ただし、メノウとアゲートは、厳密にいうと対象となる石の範囲が異なる。
アゲートはシリカ(二酸化ケイ素)が結晶した、石英の一種だ。石英の大きな結晶は水晶と呼ばれ、目に見えないごく微小な繊維状の結晶が集合して塊になったものはカルセドニー(玉髄:ぎょくずい)と呼ばれる。このカルセドニーはほぼ無色だが、岩の空隙などに熱水が入り、カルセドニーが層をつくりながらできていく過程で、鉄分などの他の鉱物の析出も同時におこり、これがそれぞれの層を染め分けるようにして、濃淡や色彩の変化に富んだ縞模様を生み出すことがある。こうした美麗な玉髄が、宝石用語として、アゲートと呼ばれてきた。
日本では色も模様も無いカルセドニーもメノウと呼ばれている。「メノウ海岸」と名づけられた場所に落ちているのはほとんどが無色半透明のカルセドニーだし、「赤メノウ」と呼ばれているものの多くも、欧米ではカーネリアンと呼ばれ、アゲートとは区別されている。これはアゲートもメノウも、本来宝石用語であって、厳密な科学的分類によるものではないことに起因している。筆者も通常「メノウ」という語を使うことが多いが、本シリーズでは、羽毛状の含有物のあるものを「プルーム・アゲート」という呼称で一冊にまとめた経緯があり、本書では、近年日本の鉱物市場でも広く使われはじめている「アゲート」の呼称に統一することにした。
アゲートにはさまざまなタイプのものがあるが、本書では最も基本的な姿である縞模様のものをクローズアップして一冊にまとめている。世界各地で採れるが、産地ごとに特徴があり、驚くほどカラフルに色づいたもの、繊細で優美な縞模様をもつものなど、実にさまざまだ。本来、宝石としては価値の高くない半貴石だが、高品質で稀少な産地のものには、近年驚くほど高価な価格がつくことがある。
本書では他のコレクターの協力も得つつ、世界各地の主な産地のものを厳選して掲載した。縞模様と色彩が生む目眩く造形の世界を楽しんでいただきたい。