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頑張らない猫が教える 脱力系哲学の言葉

記事:大和書房

『考えない猫が教える 脱力系哲学の言葉』大和書房
『考えない猫が教える 脱力系哲学の言葉』大和書房

 人間関係、承認欲求、幸せ、生きる意味……。人類2000年の悩みは変わらない。

 ニーチェ、カント、プラトンらが残した言葉を紐解くと、今も大昔も人間の抱える問題はたいして変わらないということがよくわかります。

 「不幸とは気を紛らわすことにゃ」(パスカル)から始まるこの本。パスカルは死後出版された『パンセ』が有名な哲学者であり数学者です。

 パスカルと言えば「人間は考える葦である」という言葉があまりにも有名ですが、あえて「不幸とは気を紛らわせることである」という、なんとも人間くさい言葉を選んでいるところが、この本の醍醐味です。猫写真は著者の原田まりるさんの愛猫。超脱力しているお鼻がピンクのグレーヘアーのふわふわの猫。

 不透明な時代において、未来への不安、過去の後悔、人生の苦悩は付きまとい、ついネガティブな想いのとらわれるのが人間というもの。過去や未来への不安にとらわれず、気を紛らわせて今を楽しむことが幸福というパスカルの言葉は、考えすぎる現代人に「考えにゃい努力」をしろと訴えかけてきます。まさに、超脱力の哲学なのです。

悩みによりそう哲学の言葉

 『幸福論』が人気のアランも示唆に富んだ言葉を残しています。

 「お金を失ったとしても、お金を稼ぐ才能は減らないにゃ」。これはなかなかの寄り添い系哲学といえます。つまらない買い物をしてしまった。投資で失敗した。人生において誰もが抱えるお金の問題に、救いの手を差し伸べてくれます。また、失敗を恐れるのではなく、兆戦への後押しをしてくれます。この言葉には人生の岐路にたつような不安だけど、じっと一点を見つめ自分を奮い立たせるようなシャープな黒猫の写真です。

 さらに、ショーペンハウアーは今、繊細で悩みがちな人に響く言葉を残しています。「ちいさなことで落ち込むときは、大きな不安がないって証拠にゃ」。

 つまり、小さなことでクヨクヨするのは、大きな不安がないということだから、幸せの証拠であるということなのですが、つまり、小さなことでクヨクヨしたり、考えすぎるのは大昔からあったということがうかがえます。そして、猫写真がまたかわいい。お母さん猫が、子猫の頭をなでなでしています。数ある哲学の言葉の中から、私たちの悩みに寄り添うものがセレクトされています。

上から目線ではなくドローン目線

 一方で、力強く、私たちを奮い立たせてくれる哲学のエッセンスもちりばめられています。

 オーストリアの精神科医でもあるフランクルは「信じるということは、それを真実にすることにゃ」といいます。かれはナチスに強制収容された絶望的な体験をもとに、人生を豊かにするためには創造価値・体験価値・態度価値の「3つの価値」が大切だと唱えた哲学者です。そのフランクルが残したこと言葉は、私たちが生きる上で圧倒的な力「信じる力」について語りかけてきます。猫は、著者でもある猫写真家・関由香さんの飼い猫がモニターにずらりと並んだ写真を鋭い目で見つめています。

 癒し感満載の哲学の言葉集ですが、その根底には2000年の人類共通の悩みに対して、哲学者たちが考えに考ぬいた方法論や答えがあります。哲学は人類の先達が問い続けてたどり着いた景色を垣間見せてくれるドローン目線のようなものと著者の原田まりるは言います。

 上から目線ではなくドローン目線で見ると、悩み多き人生も視野が広がって自分らしく生きることができる。肩の力を抜いて、脱力系で人生を楽しめるヒントをくれる本です。

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