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【対談】古賀茂明氏と佐高信氏が暴く菅義偉「暗黒政権」の実態――平凡社新書『官僚と国家』より

古賀茂明氏と佐高信氏(撮影/川島保彦)
古賀茂明氏と佐高信氏(撮影/川島保彦)

安倍政治をさらに陰湿に継承

佐高 政治の動きが日々生々しく、かつ、それがいかに市民の生活に敵対しているかが露わになる時代に、いま私たちはいると思います。かつて「報道ステーション」のコメンテーターとして、「I am not ABE」を敢然かんぜんと掲げ、一躍反逆児となった元経産官僚の古賀茂明さんと、「官僚と国家」という切り口で話を重ねていきたいと思います。

 安倍政権が引き起こした森友問題から、菅政権の総務省接待問題に至るスキャンダルが象徴しているように、政と官のいびつな関係、もっとわかりやすく言えば政治が官僚を下僕化する力学こそが、いまの暗黒の政権を成り立たせていると言えるんじゃないでしょうか。そこで、こういった構造がどんなふうにつくり上げられていったのか、その核心を可能な限り生々しく、具体的に見ていきたい。

 まず、2020年の8月を振り返っておきたいんですが、反安倍を唱えた古賀さんとしては、安倍退陣は喜ばしいという感じでしたか?

古賀 ネットなどを見ていても、それまで安倍さんに対してさまざまな不満があったんだけど、急に消えていなくなってしまって、しかも菅さんはひとまず安倍政権を継承すると宣言した。それは要するに安倍政治が素晴らしかったという認識でもあるわけで、安倍さんがやってきた数多くのおかしなことも、これで全部まとめてリセットされ、これまでの良かった政治を、このまま続けましょうという流れがつくられましたよね。

 だから、安倍さんのことを批判してきた側の人たちにとっても、怒りのぶつけどころがなくなってしまったところもあるんじゃないですかね。「安倍ロス」は、リベラル側にもあるんじゃないかという気がしています。

佐高 私なんかは、安倍は相手にするに足る人物ではないとずっと感じてきて、実質の敵は菅だと捉えていました。

 安倍から菅への継承ということで言えば、菅は「疑似安倍」ということですよね。そしてさらに本質的には、そもそも菅は安倍政治の悪を担ってきた。だから、菅政権では、もっと陰湿な形で安倍政治が継承されるということになると思うんです。

 古賀さん、官僚から見て、安倍と菅では、くみしやすいのはどちらなんですか?

古賀 どっちもどっちでしょうね。

 というのは、安倍さんは、自分が本当に関心があること以外は、ほとんど関心も知見もないんです。本当に関心のあることというのは、安保法制とか、憲法改正とか、オリンピックとか、あるいは、いわゆる「アベ友案件」ですね。それ以外のことには、自分が出張っていこうという構えがまったくなかったので、安倍案件以外の行政のほとんどの領域については、はっきり言って官僚のやりたい放題、官僚に丸投げの状態だったと思います。

 ただ、安倍案件に関わってしまうと、予測もできないほど変なことが起きるという、そういう意味での怖さがあった。菅さんが安倍さんと違うと思うのは、本当にやりたいことは何なのかがよくわからない。安倍案件のようなごく少数の、と言っても重大な内実ですが、こだわりすら見えない。菅さんはこれだけは俺がやりたいというのはたぶんなくて、全体が無関心事項なんじゃないか。

 何がそれにあたるのか、あらかじめ予測はしにくいけれど、菅案件だということになれば、やはり安倍さんのときと同じような作用を官僚の間に引き起こすと思います。

この政権は暗黒政治になる

古賀 安倍政権はレガシーがないと言われているんですが、僕はものすごく大きなレガシーを少なくともふたつ残したと思っています。そのひとつは官僚支配。もうひとつがマスコミ支配。このふたつのシステムをほぼ完成させた。実際にシステムを作り上げて、かつ動かしたかなりの部分は今井君の力もあるんだけど、菅さんの介在も大きかったと思うんですよ。

 特に安倍政権ができてからしばらくの間は、菅さんはマスコミ対策に本当に力を入れていたと僕は聞いている。一日三回メディアと食事する、と。昼一回夜二回、さらには朝食会もやる。毎回相手を変えて、有力な記者や、あるいはテレビのコメンテーター、そういう人たちとご飯を食べ、次々と籠絡ろうらくしていく。

 一言で籠絡すると言っても、呼ばれたほうはさまざまなことを感じるわけで、「先生、素晴らしいですね。いつもいいコメントをしていただいて勉強させていただいています」と菅さんは言うらしいんですけど、そうすると安倍批判をしていた人はドキッとするらしい。それ以後、もう安倍批判をしなくなるというような感じで、どんどんマスコミを抑えていく。

 僕が「報道ステーション」でコメンテーターをやっていたときは、官邸から「報道ステーション」は狙いうちにされていて、さまざまな形で圧力がかかっていたんですけど、菅さんは、そうやって権力の基盤をつくってきた人ですよ。

 菅さんは、安倍政権が完成させたレガシーたる官僚支配、マスコミ支配をそのまま引き継ぐわけです。彼はその基盤をつくることに大きく貢献したわけだから、継承者としての正統性は高いということになります。

佐高 北村も国家安全保障局長として残りましたよね。

古賀 もし北村さんを外すとすると、菅さんにはリスクがあったはずです。というのは、ひょっとすると北村さんは菅さんのスキャンダルも集めているかもしれないわけですから。菅さんが清廉潔白な政治家であれば別ですけれど、そういうわけではないですよね。もちろん、北村さんは菅さんに貢献してくれるはずという期待もしていると思います。

佐高 菅―北村の連携で情報管理と統制を進め、監視国家をさらに強固にしていく、と。

古賀 ええ。これまでずっと溜めてきた官僚とか政治家のスキャンダルは、そのときどき、状況に応じて文春に流したり、読売新聞に流したりするんでしょうけど、菅さんがそれをすべて掌握しているということは官僚も政治家も感じているでしょうから、これは相当、睨みが利くようになります。

 だからこの政権は、暗黒政治になるなという感じはしますね。

(以上、平凡社新書『官僚と国家』第1章「統制と陰謀の暗黒政治」より抜粋)

『官僚と国家――菅義偉「暗黒政権」の正体』目次

第1章 統制と陰謀の暗黒政治――菅政権の正体
安倍政治をさらに陰湿に継承/菅の頭は竹中平蔵の借り物/「影の首相」だった今井尚哉/「耳野郎」北村滋と特高的統制/この政権は暗黒政治になる/岸井成格は菅に「殺された」/菅は「報道ステーション」をどうつぶしたか/批判的な言論は排除されて当たり前に/政権が官僚の頭を腐らせた/渡辺ミッチーの秘書を務めた/優秀な官僚は政治家に恩を売る/首相になってはいけない裏の人間/安倍流ルールは「逮捕されなければいい」/霞が関の倫理は崩壊させられた/なぜ経産省出身の政治家が増えたのか?

第2章 政治家の劣化と官僚の弱体化、そしてメディアの翼賛化
「異色官僚」佐橋滋の非戦/佐橋流はもう通用しないのか/規制権限なき官僚に何ができるか/「政治というのは昔から悪かった」/戦略的な集団戦ができない時代/外にも味方をつくる/嶋田隆次官問題 異論やオルタナティブが許されない/葛西敬之と古森重隆はなぜ特別か/ふるさと納税の不公正と平嶋左遷/菅こそがふるさとを破壊した/牙も嗅覚もなくしたメディア

第3章 官僚という「弱い人たち」の生態――森友事件と電力支配
官僚性善説と官僚性悪説/普通の人の弱さが災いを招く/「消防士型」の官僚は絶滅危惧種/赤木さんは強い人だったから闘えた/議事録と官僚の抵抗/安倍の発言が強制力となった/公文書管理ガイドラインの改正/残しては困る文書は保存されない/佐川理財局長は出世を計算した/電力の世界は完全独占の予定調和/河野太郎は電力改革に着手できるか/若くして「反電力」のレッテルを貼られる/やはり電力は伏魔殿/経産省は電力会社のコントロール下にある

第4章 官僚主導から政治独裁へ――内閣人事局と日本学術会議をめぐる権力相関図
内閣人事局は何を目指したか/公務員改革を政治が悪用した/安倍政権に内閣人事局は不要だった/族議員と官僚の結託という構図/杉田官房副長官の関与は不当か/どんな理由があっても任命拒否してはいけない/日本国憲法の精神/岩盤右翼層/国のあり方の根本から攻めよ

第5章 原発と政治家と官僚――伏魔殿をめぐる癒着をどう乗り越えるか
橋下徹とともに脱原発を目指した/今井尚哉、騙しの原発行政/橋下はなぜ原発稼働へと転向したか/脱原発をめぐる政党秘史/経産省出身の危ない政治家たち/関西電力、クーデターから暗殺指令まで

 

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