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一冊の辞書が成り立つためには? その要素・構造・方針や、辞書の歴史をひもといてみる

記事:朝倉書店

長い歴史の中で蓄積されてきた辞書の数々は、いわば文化的所産というにふさわしい存在
長い歴史の中で蓄積されてきた辞書の数々は、いわば文化的所産というにふさわしい存在

辞書を十分に活用し、自在に使いこなすことは、その言語の文法や構造を知ること

 ある調査によれば、日本人が国語辞書を引くのは、漢字の読み書きで困ったときと、単語の意味を知りたいとき、という結果になったそうです。このことからも「辞書」が「字引」と俗称される理由がよくわかります。また、初めて外国語を学ぶときには、教科書とともに辞書を準備するのがふつうでしょう。ただ、読めない漢字の画数を導き出す訓練が必要になりますし、外国語の辞書を引くには、単語の配列順の知識や、動詞の基本形と変化形の関係、名詞ならば単数形・複数形や性差などの基礎を学んでおく必要があります。つまり、辞書を十分に活用し、自在に使いこなすことは、その言語の文法や構造を知ることと密接に関係します。どんなときにどんな辞書を選んで引けばいいのかも、実はかなり重要な問題です。

一冊の辞書が成り立つための要素・構造・方針とはなにか

 本書は、日本語の辞書に注目し、それがどのような情報を含み、どのように構成されているのか、単語や漢字の説明のしかたには辞書ごとにどのような特徴があるのかなど、一冊の辞書が成り立つための要素・構造・方針、といった観点から解説しています。また、日本語に漢字が移入された昔から、21 世紀の今日に至るまで、時代ごとにどのように辞書が発達し、日本語の歴史を知るための資料として位置づけられてきたのか、国語辞典や漢和辞典という代表的な辞書とは異なる特殊辞書にはどのようなものがあるのかなど、辞書の歴史的位置づけについて概観しています。近年、研究者が活発に使用するようになったコーパスについてもふれています。

往々にして「辞書」は「字引」と俗称されるが、日本人が国語辞書を引くのは、漢字の読み書きで困ったときと、単語の意味を知りたいとき、という調査結果がある。
往々にして「辞書」は「字引」と俗称されるが、日本人が国語辞書を引くのは、漢字の読み書きで困ったときと、単語の意味を知りたいとき、という調査結果がある。

辞書の数々は、文化的所産ともいえる

 こうして、長い歴史の中で蓄積されてきた辞書の数々は、いわば文化的所産というにふさわしい存在となりました。そして、時代は進み、技術の革新も著しく、書棚におかれていた冊子体辞書はいまや電子辞書、オンライン辞書と姿を変え、収録語数の制約はほぼなくなり、掌中のスマートフォンで大型の辞書を引くことが可能になりました。

辞書の有用性を最大限に得るためには、それぞれの辞書の特徴を知ること

 しかし、辞書を考える場合には収録語数という規模の問題だけに目をうばわれるのはもったいないことです。ことわざでは「大は小を兼ねる」と言いますが、辞書に関しては通用しないようです。それどころか、編者や出版社の違いによって、同規模の辞書でもそれぞれに特徴が見られます。辞書の有用性を最大限に得るためには、それぞれの辞書の特徴を知ることが重要です。本書を一読した後に、ご自身で実際に様々な辞書を手にとり、日本語の文字・意味・語法・アクセントなどの情報がどのように記述されているかを具体的に確かめながら、日本語を今まで以上に広く深く考えるきっかけとなることを念じています。

『辞書の成り立ち』序文より 沖森卓也・木村義之

日本語ライブラリー『辞書の成り立ち』
日本語ライブラリー『辞書の成り立ち』

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