無名の人生こそ豊かなり――人は旅の終わりに何を語るのか
「無名な人生こそ豊かなり。旅の終わりに、人は何を語り、何を遺したか」
著者が東京の多磨霊園を歩いて出会った多くの無名の人々やその周辺の人の墓碑に刻された言葉や墓誌に記された感動的なフレーズは、ひっそりと佇む墓碑が発する熱いメッセージである。その多くは、逝った人たちが家族や親しい人々に遺す思いを伝える言葉や、その人の人生経験から紡ぎ出された人生観や座右の銘、あるいは辞世的なものを語ったものであるが、一方で遺された人たちが亡き人へ語りかける熱い心情を記録したものも少なからずある。亡き人と葬送る人との間に交わされる温かい交流の言葉やメッセージは、名文や名歌・名句とは言えないとしても、掛け替えのないものとして私たちにいろいろなことを問いかけているように思われる。それらは貴重な「人間の記録」であると同時に、その人が生きた「時代の記録」でもあり、証言者でもある。
無名の人たちの言葉は、著名人の場合と違って、活字や作品として永く後世に残ることはまずない。そういう意味でも記録にとどめておくことの意味は、決して小さくないものであろう。
限りなく不透明で、閉塞感の漂う、生きづらいこの時代にあって、出会った言葉の一つ一つから、あらためて生と死への問いかけや、人と人との絆や温もり、そして生きることへの励ましや感動を読み取ってもらいたい。著者の筆力から人生の歩き方を考えさせられる、読み応えのあるエッセーです。
『墓碑をよむ――“無名の人生”が映す、豊かなメッセージ』
立元幸治:著 福村出版
たのしく のんびり いきたい 南伸坊のゆるやか健康エッセイ
NHK「きょうの健康」に連載された4年間のエッセイを書籍化。「胸が痛んだらどうするか」「耳が遠くなるということ」「〆切の効用」など、健康でいるためのマジメな秘策から読者を励ます心意気まで、健康をテーマに日々の暮らしをユーモアたっぷりに綴る。
『生きてく工夫』 南伸坊:著 春陽堂書店
老後も輝き続けるために今やっておくべきこと
10年前がちょっと昔のことと感じるように老後は気づかぬうちにやってきます。「もっと○○しておけばよかった…」と後悔しないよう、人生を最後まで味わい尽くすために知っておくべき老後にまつわる「誤解」と「リアル」そして「やっておくべきこと」。
『老後になって後悔しないために、知っておくべき88のこと』
山﨑武也:著 日本実業出版社
より良い町や、人をつくる! 金次郎の報徳思想を考える。
通称は金次郎。江戸時代末期、小田原藩領の百姓の子として生まれる。自家の再興後、実践家として武家や下野国(栃木県)の農村復興に尽力し、やがて幕吏に登用される。自己の積み上げた知識・経験をいかに社会へ還元していくのか。その向き合い方を、二宮の人生から考える。
『二宮尊徳』 大藤修:著 日本歴史学会:編集 吉川弘文館
「せんだいメディアテーク」等 建築家が建築と半生を振り返る
身体のなかから、腹の底から生み出した建築には、時代を経ても変わらない力がある。国立競技場のコンペティション敗北を原動力に、厄災の時代に建築が果たす役割を問い続ける伊藤豊雄。人生の先輩が若い人に語りおろす自伝「のこす言葉」シリーズの一冊。
『伊東豊雄――美しい建築に人は集まる』 伊東豊雄:著 平凡社
女とマスコミがしっかりしていれば戦争は防げる!
関東大震災にあい、この国の激動の100年を経験し、100歳で逝った日本画家の決定版評伝。師を持たず、一所不住の自律した生き方は、小さな生き物やヒマラヤのブルーポピーの絵画を通してばかりでなく、没後の今もひろい世代からの共感を呼んでいる。
『虹の橋を渡りたい――画家・堀文子九十七歳の挑戦』
中田整一:作 幻戯書房
100歳でフルマラソンを完走 元気と勇気がもらえる伝記絵本
足が弱く歩けなかった幼少期をたゆまぬ努力で乗り越えたファウジャ。80歳を過ぎて走る楽しさを知り、88歳でロンドンマラソン完走後、彼が立てた新たな目標とは?そのひたむきな挑戦と、100歳で史上初の偉業を成し遂げた驚きの生涯をのびやかな絵と文で綴ります。
『100歳ランナーの物語――夢をあきらめなかったファウジャ』
S・J・シング:文 B・カウル:絵 金哲彦:監修 おおつかのりこ:訳 西村書店
最も小さな経営単位 おひとりさまの戦略経営
単なるハウツー書ではなく、会計学や経営学の理論を基礎とした、おひとりさまライフプランの教科書。更に、図や表を用いて視覚で理解を促進し、表形式で意思決定や業績評価が出来るよう例題を掲載。ホームページからテンプレートもダウンロード出来ます。
『おひとりさまのお金の話』 吉田博文:編著 税務経理協会
この人の人生は一途なパンの味がする
質実剛健なパン、小麦本来の味がする<ほんもの>のパンをめざし、98歳の今日も、自前のオーブンと自ら厳選した国産小麦でパンを究める。心の中の幸福のパン種をふくらまし、いつしかそれを人生の魔法としてしまった人の物語を、パン作りの知恵とともに。
『98歳、石窯じーじのいのちのパン』 竹下晃朗:著 筑摩書房
老いのなかにむしろ荷風は哀愁の情味を見た。
荷風評論に他の追随を許さぬ第一人者が、これまで注目されることの少なかった『濹東綺譚』以降の作品や生活を中心に、老いを生きる荷風の孤愁ともいうべき姿を、絶妙な視点と腕さばきで描く力作。人の世を早いころから「老い」の目で見る荷風文学の真骨頂に迫る。
『老いの荷風』 川本三郎:著 白水社
誰もが避けられない「老い」を成熟とみなす新たな身体論へ。
「年齢を重ねたダンサーを起用したピナ・バウシュ、100歳をこえても踊りつづけた大野一雄、そして老いを成熟とみなし、老いた身体だからこそ可能な芸があると考えられてきた能や日本舞踊など、老いと踊りの関係性の分析から現代の新しい身体論を示す。
『老いと踊り』 中島那奈子、外山紀久子:編著 勁草書房
「主人公は新しい92歳のアリスだ」マンディアルグ
92歳のマリアンは不思議な耳ラッパを手に老人ホームへ。そこには個性豊かな仲間と奇想天外な冒険が待っていた。画家としても著名なシュルレアリストが贈る幻想譚。「70歳以下の人間と7歳以上の人間を信用してはだめよ。猫でもないかぎりね…」
『耳ラッパ――幻の聖杯物語』
レオノーラ・キャリントン:著 野中雅代:訳 工作舎