闇、影、迷路、迷宮、暗黒、神秘、儀式。地下世界への旅
十六歳で近所の地下トンネルに入って以来、 地下世界の虜になり、何かに取り憑かれたように冒険をくり返してきた著者の、半生をかけた探検記である。自分の心を惹きつけてやまないこの「地下」とは何なのか、答えが見つからないまま、彼はニューヨークを皮切りに世界の地下を旅し、やがてその奥深さに気づきはじめる。
太古の昔から人間と地下には不可分の関係があった。すべての文明・文化のあらゆる人間活動にその痕跡が残っている。地下や洞窟で暗闇に包まれたとき襲われる不安や恐怖は、人類共通の感覚だ。進化と自然淘汰の過程で生物としてのヒトの脳に刻み込まれてきた記憶や衝動を、著者はひとつひとつ掘り起こしていく。みずから地下へ赴き、神話や創世の物語を読み解き、哲学者や文学者の言葉に触れ、多重的・多角的な視点で「地下世界」へと切り込んでいった先に見えてきたものとは……。
本書を構成する九つの章はどれも、私の個人的体験を呼び覚まし、揺り起こすものばかりだった。真っ暗な空間を前にしたときの戦慄。そこでふと湧き上がる、奇妙な好奇心。道に迷ったとき感じる、なんとも言えない心細さ。感覚喪失と平常心の消失。未知の世界(地底)への漠としたあこがれ。彼岸と此岸の境界。地下にまつわる神話や伝説。つまり、「思い当たるふし」が満載なのだ。
私が生まれてからずっと自分の中に取り込んで咀嚼し、消化して紡ぎ上げてきた言葉の体系にも、「地下」 から連想されるキーワードがどっさりストックされている。「闇」「影」「迷路」「迷宮」「暗黒」「神秘」「謎」「儀式」……。(訳者あとがきより)
『地下世界をめぐる冒険――闇に隠された人類史』
ウィル・ハント:著 棚橋志行:訳 亜紀書房
今昔物語の「鬼」にまつわる話をリミックス
今昔物語の中から「鬼」と男女関係にまつわる話を現代語訳。復讐の刃を向ける鬼女自ら鬼になることを選んだ高僧、人を馬に変える鬼、妖しい香りに酔わされた男…など、恐ろしくも妖艶な物語21編を収録。現代人にも通じる人間の業を描く!
『鬼ものがたり』 桑原茂夫:著 春陽堂書店
自然のダークサイド、その深遠な世界にご案内
人の頭に取りついて成長するハエの幼虫。30年も人体の中で生き続ける線虫。人を刺したあと、5分以内で死に至らしめる毒貝母親の胎内で、生まれる前の弟妹を食い殺すサメ。自然のダークサイドを静かに描いた、夏の夜の読み物。
『母なる自然があなたを殺そうとしている』
ダン・リスキン:著 小山重郎:訳 築地書館
タイを中心とした、アジア最凶の現代怪談ルポ
タイ在住20年の作家が紹介する、アジア最深部に広がる怪異譚。大量の死者が出た火災現場で起こる怪異、続発する交通事故現場、宿泊客には知らされない「出る」ホテル、霊が毎夜やってくるスナックから、謎のシマウマの置物や人力車の幽霊まで、一挙紹介。
『亜細亜熱帯怪談』 髙田胤臣:著 丸山ゴンザレス:監修 晶文社
みんなが知ってるあの商品の工場に潜入!
シャリシャリのソーダアイスをかじると中からガリガリ、ソーダ味のかき氷。みんな大好き「ガリガリ君」の工場に潜入取材。ソーダ味の液体が作られ氷と混ぜるとシャーベット状に。ぎゅっと凍らせて並んだ姿は圧巻! おなじみの商品の製造過程をビジュアル化。
『ガリガリ君の工場〈アイスキャンディー〉』
高山リョウ:著 岩崎書店
知ればもっと美味しくなる ビールの奥深い世界へ!
切っても切れない関係の、人類とビール。ビールは普遍的な文化そのものだ。古代の醸造法へ、人気のクラフトビールへ、あるときは史料を読みこみ、あるときは世界中を旅して迫っていく。科学的解説とともにお届けする、面白くて意外なお話たちのはじまりはじまり。
『ビールの自然誌』 ロブ・デサール、イアン・タッターソル:著
ニキリンコ、三中信宏:訳 勁草書房
あなたの会社は大丈夫ですか? 不正抑制の鍵は!?
2020年から社外取締役設置が義務化されました。会社を存続するには、不祥事防止、リスク管理に対応しなければなりません。本書は、三菱電機グループ、スルガ銀行、日産等の不祥事企業の実態を分析し、最適な社外取締役・監査役の選任と活用方法を解説。
『最近の企業不祥事』 柏木理佳:著 税務経理協会
時代ミステリの嚆矢。怪奇な事件の捕り物帖。
大正期に発表された、泉鏡花の実弟による、表題作や『遊女花扇の死』など10篇を収録。殺された商人が蛇に化身する話など、怖い話ばかり。岡本綺堂『半七捕物帖』、池波正太郎『鬼平犯科帳』も、これらの作品に材をとったと言われる、再発見の作品集。
『百本杭の首無死体――泉斜汀幕末探偵奇譚集』
泉斜汀:著 幻戯書房
研究者さえ知らなかった極地の秘密に迫る
凍てつくブリザードが吹き続く閉ざされた真っ白な世界だと思ったら大間違い! 北極の大地を色とりどりに染めるお花畑、多様性に満ちた生き物たち、南極の湖底に広がる生命の進化が隠された神秘的な森。研究者だからこそ撮影できた貴重な写真と解説がたっぷり。
『北極と南極――生まれたての地球に息づく生命たち』
田邊優貴子:著 文一総合出版
不思議なものに心惹かれる私達 “あやしい”絵本の世界
「あやしい」といっても、さまざまな「あやしさ」がある。「奇」「異」「怪」「妖の4つの字をキーワードに、“あやしい”雰囲気に満ちた約100冊の絵本を紹介。 京極夏彦×東雅夫の対談、宮部みゆきインタビュー、横尾忠則清水崇らのエッセイも掲載。
『あやしい絵本(別冊太陽240)』 東雅夫:監修 平凡社
眺めるだけで涼しくなりそうな、文字のない絵本はいかが?
シロクマがクジラに乗ってやってきて…。ツリーハウスをめざして、空からも陸からも、楽しい仲間が集まってくる!さわやかなイラストと絵本ならではの優しい世界観が、暑さに疲れたアタマや心をそっと癒してくれます。ボローニャ・ラガッツィ賞他各賞受賞。
『ツリーハウス』
ロナルド・トルマン、マライヤ・トルマン:作 西村書店
北極の象徴である、白く美しいカリスマ的野獣の謎と魅力
絶滅危惧種として、また地球温暖化に警鐘を鳴らす象徴としてこよなく愛される種の数奇な運命。先史時代から現在にいたる八千年の歴史を通じて、この白く美しいカリスマ的な野獣に私たちが抱くイメージや観念の形成をたどる一大文化史! オールカラー図版175点。
『ホッキョクグマ――北極の象徴の文化史』
マイケル・エンゲルハード:著 山川純子:訳 白水社