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対談は素敵な出会いがつまった「魔法の箱」――『五木寛之傑作対談集Ⅱ』

記事:平凡社

対談時の五木寛之さんといしだあゆみさん(石山貴美子撮影、1987年、『五木寛之傑作対談集Ⅱ』「いしだあゆみ×五木寛之 いま、「大人の時代」幕開けのとき」より転載)
対談時の五木寛之さんといしだあゆみさん(石山貴美子撮影、1987年、『五木寛之傑作対談集Ⅱ』「いしだあゆみ×五木寛之 いま、「大人の時代」幕開けのとき」より転載)

2025年8月22日刊『五木寛之傑作対談集 Ⅱ』(五木寛之著、平凡社)
2025年8月22日刊『五木寛之傑作対談集 Ⅱ』(五木寛之著、平凡社)

 2025年8月22日に刊行される『五木寛之傑作対談集Ⅱ』は、2024年11月刊行の『五木寛之傑作対談集Ⅰ』に続く対談集シリーズの2巻目です。1巻に続き、これまでに五木寛之さんが行ってきた数えきれないほどの対談の中から、とっておきの15編を選びました。

 本書に収録された対談は、1970年代から2020年代まで、昭和・平成・令和と3つの時代にまたがります。ひとつの対談から次の対談へと読み進めるたびに、それぞれの時代の空気の違いがより際立って感じられるのも、この本の面白さです。

 いしだあゆみさんとの対談では、まさにその「時代の空気」について語っています。

いしだ いまね、私、いわれて一番嬉しいのは、「なんだかわかんないけど、いいね」っていうの。そういわれるの、好きなんです。
五木 ああ。
いしだ 一番の褒め言葉っていうか、“ああ、良かった”って思う。(中略)「うまくなったね」とか、「綺麗になったね」っていわれるより、もっと贅沢なことだと思います、いつの世でも「いいね」っていわれるのは。総合的なものなんです。空気なんですよ。
五木 うん、時代の空気って、すごく大事ですね。その時代を過ぎてふり返って見たときに、それがすごくつまらなく見えると、昔の人は、長い目で見ると、あれはつまらないものなんだというんです。でも僕は違うと思うね。芸術というのは一回性のものだから、一九六〇年代にそれが素晴らしかったなら、それは素晴らしかったものだと思う。八〇年代にそれがわかるわけがない。時代の空気というのは、そこなんです。
(「いま、「大人の時代」幕開けのとき」より)

対談時のいしだあゆみさん(石山貴美子撮影、1987年、『五木寛之傑作対談集Ⅱ』「いしだあゆみ×五木寛之 いま、「大人の時代」幕開けのとき」より転載)
対談時のいしだあゆみさん(石山貴美子撮影、1987年、『五木寛之傑作対談集Ⅱ』「いしだあゆみ×五木寛之 いま、「大人の時代」幕開けのとき」より転載)

 2人の対話は、ときどき冗談を交えつつ、俳優としての生き方や時代と向き合う姿勢にまで及び、楽しいお喋りと深い人生論を軽やかに行き来します。その中には、今では懐かしく感じられる習慣や常識も当たり前のように登場します。

 今、何気なく交わしている会話を、もし10年後に読み返すことができたら、私たちはいったい何を思うのでしょうか。そこにはやはり、2025年ならではの「時代の空気」が流れているのかもしれません。そんなことを考えていると、対談というものの面白さをあらためて感じます。

 本書の中で、五木さんは対談について次のように語っています。

 対談、対話とひと口で言っても、それぞれのシーンは芝居の場面のようにちがう。
 私はそれらの人びととの出会いを、きのうのことのように憶えている。
 この対談集シリーズは、私にとって小説以上に大切な個人的な思い出がぎっしりつまった魔法の箱なのだ。
(「まえがき」より)

 本書では、たくさんの「出会い」を読むことができます。フランソワーズ・サガンさんと車の話で盛り上がったり、大島渚さんから撮影中の『愛のコリーダ』のエピソードを聞いたり、横尾忠則さんと老いについて語りあったり……。

 「魔法の箱」を開けるように本書をひらいて、それぞれの出会いが持つきらめきを感じていただければ幸いです。

(文=平凡社 編集部 安藤優花)

『五木寛之傑作対談集Ⅱ』目次

フランソワーズ・サガン 倦怠と孤独の作家の対談(1978年)
三宅一生 女と男がクロスオーバーする時がきた!(1977年)
石原慎太郎 「自力」か「他力」か(1999年)
大島渚 日本映画の活路を求めて(1976年)
林真理子 捨てない生き方(2022年)
横尾忠則 生涯現役をめざして(2019年)
いしだあゆみ いま、「大人の時代」幕開けのとき(1987年)
野坂昭如 若者へのぼくら二人の訣別宣言(1971年)
北方謙三 決別と流転のブルース(2013年)
岩下志麻 誇り高き女のエロチシズム(1971年)
阿佐田哲也 賭博的人生論(1978年)
内田裕也 男はロックで勝負する(1976年)
荒木経惟 接触写真家との接触(1973年)
大原麗子 昔は耐える女、今は自立する女(1982年)
松本清張 ドキュメンタリーの源泉〔抄録〕(1976年)

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