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ロックスターから評論家まで、対談で見えた「本音」とは? 『五木寛之傑作対談集Ⅰ』

記事:平凡社

写真は小瀧達郎撮影、1984年、対談収録時のもの。『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』「五木寛之×瀬戸内寂聴 京都、そして愛と死」より転載。
写真は小瀧達郎撮影、1984年、対談収録時のもの。『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』「五木寛之×瀬戸内寂聴 京都、そして愛と死」より転載。

2024年11月22日刊『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』(五木寛之著、平凡社)
2024年11月22日刊『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』(五木寛之著、平凡社)

 「対談集を作りましょう」と企画が立ち上がったのは、去年の冬のこと。

 おもに雑誌に収録された五木寛之さんのこれまでの対談を集め、その中から五木さんご自身に選んでいただいた14篇の対談を1冊にまとめたのが、本書『五木寛之傑作対談集Ⅰ』です。300を超える対談の中から厳選した、まさに「傑作」ばかりの対談集ができあがりました。

 本書の「はじめに」で、五木寛之さんは次のように書いています。

 人と会って、語りあう、その一瞬にも人間の真実がかいまみえる対談を、これまで以上に大切にしたい、と考えているところだ。

 対談を読んでいてしみじみ感じるのは、異なる背景を持つ二人が、同じ空間で向き合い、語りあううちに、家族や友人にも話したことのないような本音が見えてくる面白さです。

 本書に収録されている瀬戸内寂聴さんとの1984年の対談は、気楽なお喋りで始まります。京都で暮らして感じたこと、「都会のセンス」とは何か……。気心の知れた間柄だからこその他愛ない会話は、いつしか女性の生き方、愛と死について、と深まっていきます。

瀬戸内 (前略)一つ、思い当たったのは、死っていうことは自分の死についていくら考えてもわからない。愛する者の死を送るときに初めて死の意味がわかるっていうんですよね。
五木 はい。
瀬戸内 非常に文学的な解釈だけれど、私もああ、これだと思いました。死なれてみてつくづくその人をいかに愛していたかってこと、その愛の重さとか愛の意味とか、そういうものがわかってくるっていうことを感じました。
五木 また悲観的な言い方になりますけど、言いかえてみますと、失うまでは人間はほんとうの価値がわからないってことがある。失った者どうしは、お互いの落胆のしぶりはわかる。
瀬戸内 そうそう。そしてそれは、失ったときはもう帰ってこないんだから。その時初めてその重さがわかってくるんですよね、人間は。だから死ってものはね、私は何もなくなるんじゃなくて、残していくものだということを感じたんです。

写真は小瀧達郎撮影、1984年、対談収録時のもの。『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』「五木寛之×瀬戸内寂聴 京都、そして愛と死」より転載。
写真は小瀧達郎撮影、1984年、対談収録時のもの。『五木寛之傑作対談集 Ⅰ』「五木寛之×瀬戸内寂聴 京都、そして愛と死」より転載。

 編集を進める中でさまざまな方から対談当時のお話を伺う機会がありました。中には、今はもう会えない人との思い出を話してくださる方も。交わした言葉のひとつひとつを教えていただくたびに、過ぎた時代が対談を通してよみがえってくるような気がしました。

 本書の対談の収録時期は、1972年から2002年までの30年間にわたります。ページをめくるうちに「そういえばこんな時代があった」「この頃、私はこんなふうに過ごしていたな」など、ふと思い出すことがあるのではないでしょうか。

 この本が、皆さんの記憶の引き出しを開ける鍵になればと思います。

(文=平凡社 編集部 安藤優花)

『五木寛之傑作対談集Ⅰ』目次

モハメド・アリ 余は如何にしてボクサーとなりしか
村上春樹 言の世界と葉の世界
美空ひばり よろこびの歌、かなしみの歌
長嶋茂雄 直感とは単なる閃きではない
ミック・ジャガー ぼくはル・カレが好き
キース・リチャーズ 男と女のあいだには
唐十郎、赤塚不二夫 やぶにらみ知的生活
篠山紀信 “大衆性”こそ写真の生命
山田詠美 女の感覚、男の感覚
坂本龍一 終わりの季節に
瀬戸内寂聴 京都、そして愛と死
福山雅治 クルマ・音楽・他力
太地喜和子 男殺し役者地獄
埴谷雄高 不合理ゆえに吾信ず〔抄録〕

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