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牧彩子×樽井美帆「まるごと語ろう! タカラヅカ!!」――『魅力まるごとタカラヅカ!!』刊行記念トークイベント(後編)

記事:平凡社

『魅力まるごとタカラヅカ!!』を手にする著者の牧彩子さん(左)とエフエム宝塚「レビュー・ステイション」パーソナリティーの樽井美帆さん(右)
『魅力まるごとタカラヅカ!!』を手にする著者の牧彩子さん(左)とエフエム宝塚「レビュー・ステイション」パーソナリティーの樽井美帆さん(右)

『魅力まるごとタカラヅカ!! 宝塚歌劇ガイドブック』(牧彩子著、平凡社刊)
『魅力まるごとタカラヅカ!! 宝塚歌劇ガイドブック』(牧彩子著、平凡社刊)

《前編はこちらから》

舞台をつくる演出家とスタッフ

樽井美帆:牧さんが今回出された『魅力まるごとタカラヅカ!!』の発行日は6月20日ですよね。これは何の日でしたっけ?(笑)

牧彩子:月組トップスター鳳月杏さんのお誕生日でございます(笑)。1冊目の『寝ても醒めてもタカラヅカ!!』は望海風斗さん(元雪組トップスター)のお誕生日に刊行しました。

 『寝ても醒めてもタカラヅカ!!』は2018年刊行だったんですが、劇場や劇団のシステムも変わっていったり、新しい演出家の先生の作品が上演されたりもして、今に合ったガイドブックを新しく作ろうと。劇団公式の情報をベースに、宝塚歌劇111年の歴史の中で、今では当たり前になっているけれどいつ始まったのか知らないことだったりをまとめておきたいなと思ったんです。それで昔の宝塚歌劇のことを約2年かけて調べて。自宅は戦後すぐぐらいから今までの『歌劇』と『宝塚グラフ』 がほとんどある、まるで池田文庫(宝塚歌劇をはじめとした演劇の専門図書館)みたいになっています。

 ただ、ラフのイラストを描いている時に、宝塚大劇場が改装しちゃって。劇場案内のページで、めっちゃフルール(大劇場内のカフェテリア)のたこ焼きやラーメンを紹介していたのに、改装後になくなってしまって(笑)カットしました。

宝塚大劇場の案内ページ。『魅力まるごとタカラヅカ!!』より
宝塚大劇場の案内ページ。『魅力まるごとタカラヅカ!!』より

樽井:牧さんの本は、どれも文字がぎゅうぎゅうに詰まっているじゃないですか。宝塚への愛が溢れているのを感じるのですが、特に面白いなと思ったのが、演出家の紹介ページです。演出家別のお芝居・ショーの特徴や演出家の方の似顔絵イラストがあるので、親しみが湧きますよね。

牧:ありがとうございます。1つ、皆さんに赤ペンで書き足してほしいって思っていることがあるんです。齋藤吉正先生のページに「心の声しゃべりがち」って(笑)。スターさんの録音している心の声が『CITY HUNTER』(2021年雪組)でも『ROBIN THE HERO』(2025年雪組)でも流れたんですよ。

演出家・齋藤吉正先生の紹介ページ。『魅力まるごとタカラヅカ!!』より
演出家・齋藤吉正先生の紹介ページ。『魅力まるごとタカラヅカ!!』より

樽井:みなさん、書き足してください(笑)。演出家の方だけじゃなくて、舞台美術や大道具、照明といった制作スタッフについて紹介をするページもありますよね。

牧:劇場の端の席で観ていてると、たまに舞台上の階段を動かしているスタッフの方の足とかが見えるんですよね。今の時代はCGで何でもできちゃうけど、宝塚の舞台はいろいろなスタッフの人が作品の世界を形にしていることを感じます。作曲家の先生方はスターさんの得意な音域がわかっていたり、長年劇団にいるスタッフのみなさんの団結力で、宝塚歌劇の作品の完成度が高いんだというのを感じています。

ライフステージごとに楽しめる

牧:宝塚歌劇は、同じ作品が上演されても、演じるスターさんが変わったり、自分のライフステージが変わったりしているので、感動するポイントが違ってくるんですよね。『ロミオとジュエリエット』は、昔はジュリエットに感情移入していたんですが、今は「乳母」です(笑)。 岡田敬二先生のロマンチックレビューのような、夢を見る時間の尊さにも気づき始めました。

 あと、今のトップスターさんたちより自分が年上になったこともあって、「すごく努力して、頑張ってらっしゃるなあ」とひとりの女性として尊敬のまなざしで見るというのもありますね。

樽井:番組では元タカラジェンヌをゲストにお迎えしているんですが、 みなさん、ほんとうにドラマがありまして。毎回すごいなって感動しております。

 私たちは今からはどんなに足掻いてもタカラジェンヌにはなれませんが(笑)、もしなれたとしたら、どういうタカラジェンヌになりたいですか?

牧:名バイプレーヤーの娘役ですね。大劇場では面白い役で、小劇場ではめっちゃ泣かせるおばあさんの役をやるみたいな。トップスターさんに「おばあちゃん!!」って泣きながらしがみついてもらえる特典付き(笑)。芝居にピリッとスパイスをきかせられる役者になりたいと思います。

ファンとして、劇場の一員として

樽井:宝塚歌劇は今年で創立111周年を迎えましたね。

牧:『魅力まるごとタカラヅカ!!』には、111年の歴史の中で、その時代ごとの印象に残った作品や変わり目になった作品をピックアップした年表を入れたんです。初期の頃は忍者ショーやアイスショーをやってるんですよ。アングラ寄りの作品の時期があったり。

 小池修一郎先生が、昔、『ルパン三世』を提案したら「宝塚の清く正しく美しい雰囲気に適さない」って企画が通らなかったんだけれど、2015年に小柳奈穂子先生が『ルパン三世』の演出をして、時代は変わったんだなって思ったって話されてて。今はトップコンビが恋愛に発展しない作品が増えてるように思うんですが、劇団が求めている作品も変わっていってるのかなと。昔は通らなかった企画が今は通ったりっていう変化も面白いなと思いました。

樽井:若い演出家の方が登場しながらも、ベテランの先生方も元気ですよね。番組に来てくださった演出家の三木章雄先生や岡田先生もとてもお元気で。作曲の吉崎健二先生が91歳で番組に来てくださったときに、「まだまだ作る」とおっしゃってました。

牧:ファンの自分も劇場の一員として、宝塚の歴史の中にいるんだって思うと嬉しいですね。つらい出来事もあったじゃないですか。この本はその最中に描いていたので、この出来事があって、それでも私が描きたいこと、伝えたいことって何だろう?っていうのをものすごく考えました。

 111年の歴史の中でいろんなことがあって、変えていくべきところを変えていって。まさに今もいろいろ変わっていくときでしょうけど、みんなが少しずつ積み重ねて、失敗しながらも、宝塚歌劇の歴史をつないでいってるというのを感じていて、その気持ちを込めたので、読んでいただいた方にも伝わっているとうれしいですね。

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