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僕らのチカラで世界は変わる! 『平和をつくるを仕事にする』より

記事:筑摩書房

original image:AboutLife / stock.adobe.com
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 僕らの日常生活の延長線上に、アフリカの紛争があることを自覚した時に、大きなショックを覚えるでしょう。

 たとえば、テレビで世界中の貧しい国の子どもたちの姿が映し出された時に、「かわいそう」という憐憫の心が生じます。けれども、それは「私とは関係のないところで起きている」と捉えているから、そのような気持ちになれるのかもしれません。僕もそうでした。けれども、僕らの生活の中に、アフリカを始めとする世界各地の紛争の原因が、子ども兵が生み出される原因が含まれていると気付いた時に、同情や哀れみの想いではなく、痛みを覚えるのです。

 僕らの身近なところで考えると、日常使っている、携帯電話やパソコンを始めとする電子機器に含まれるレア・メタル(希少鉱物)。コンゴ民主共和国では、レアメタルや、さまざまな鉱物資源をめぐる戦闘が今も続き、一説には5000人を超える18歳未満の子どもたちが、奥深いジャングルでの戦闘に従事させられているのです。そのような状況を、日ごろ使っている製品が生み出しているかもしれないのです。

 ただ、日常生活の中に、アフリカや世界各地の紛争の原因が存在するという事実は、僕らにささやかな「希望」をもたらしてくれるのです。なぜなら、単純な話で、原因を変えれば、そこから生じる結果も変化するからです。

 自分の生活を改めるなんて、自分にはできないと思うかもしれません。けれども、大きいことを考えるのではなく、自分の身の丈にあったところから、変化を起こしていけばいいのだと、僕は信じています。

 外食をした時に残さないように注文することで、大量消費のクセを変えてみるとか、割り箸の消費を抑えるために、マイ箸をもち歩くなど、僕らには「できること」がたくさんあるのです。

 こんなことがありました。2004年に福島県会津若松市で講演した時、Kさんという女性が、子ども兵の話にショックを受け、子ども兵の問題に対して、「自分にできること」を一生懸命、考えてくださいました。そして、彼女にできることとして、日本の携帯電話会社、携帯電話をつくっているメーカーにはがきを書いて、送ったのです。

 「子ども兵の話を聞いてショックでした。だから、あなたの会社でつくっている携帯電話にコンゴ産のタンタル鉱石を使わないでください」

 普通だったら、一介の主婦が大企業にはがきを書いて送ったとしても、相手にされないと思い、行動に移す前にあきらめてしまうでしょう。けれども、彼女は自分にできることを素直に実践されたのです。すると、ほとんどのメーカーから返事がきたのです。

 各企業ともまじめに携帯電話と紛争に関係するレアメタルの問題を考えてくれます。多くの企業が調査した結果、当時日本の携帯電話に使われるコンデンサーには、安定供給の観点からカナダ産、オーストラリア産のレアメタルを使っていることがわかったのです。

 Kさんがはがきを1枚1枚書いて、そのことに企業も真摯に対応してくれたことで、僕らも知らなかったことが初めてわかったのです。

 世界規模でも、コンゴ紛争を激化させる一つの原因としてのタンタル鉱石の役割が知れ渡るようになると、エリクソン、ノキア、モトローラ、コンパック、インテル社は供給ルートを調べ、コンゴで不法に採掘されたタンタル鉱石の買い付けを中止するように素材メーカーに圧力をかけるようになりました。

 この背景には、同じくアフリカ諸国の紛争を激化させる原因であるダイヤモンドの不法取引をめぐって、デビアス社が消費者やNGOから名指しで非難され、社会的な信用を急落させたことがあったのは否めません。

 一人ひとりの声を積み重ねると、企業や社会システムを、より良い世界をつくるために変えることができるのです。

 自分たちの生活に、世界のさまざまな問題の原因が存在する。その痛みを感じることは、僕らの希望そのもの。僕は17年間、NGO活動を続けてきて確信しています。だからこそ、何度でも、何度でも、繰り返し伝えたいのです。

 僕らは「微力」かもしれない。けれども、決して「無力」ではない。

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