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教養としての「人工知能」入門 数式なし、誰でもわかる『はじめてのAI』

記事:創元社

AIから人間の本質を見つめ直す。『やさしく知りたい先端科学シリーズ6 はじめてのAI』
AIから人間の本質を見つめ直す。『やさしく知りたい先端科学シリーズ6 はじめてのAI』

 昨今、いろいろなモノに人工知能が搭載されつつあり、ずいぶん身近な存在になってきました。今後ますます人工知能は普及していき、私たちの生活になくてはならない技術になるでしょう。私が所属する同志社大学でも、人工知能工学研究センターを立ち上げました。身近になったとはいえ、講演会やセミナーを開くともっとしっかりと人工知能のことを知っておきたいとさまざま方が参加してくれます。

数式が出てこない人工知能の話

 どうも人工知能と聞くと「数式や小難しい理論、用語などが出てきてとっつきにくい」という印象があるようです。話を聴きに行きたくても、ちょっとハードルが高い。そこで私は、誰が聴いても理解できるように「目指せ! 小学生が聴いてもわかる講演会」というコンセプトを自分に課しています。もちろん、私の話に数式などは一切出てきません。ある日、その講演会に、創元社の編集者であるH氏が来てくれたのです。いや、正確には、来てくれていたようなのです。

 後日、メールで丁寧な連絡があり、H氏がその場にいたことを知りました。そしてお会いすることになりました。実際にお会いするまでは、どういう人かもわからないし…と半信半疑だったのですが、視野が広く、機動力や想像力や発想力のある素晴らしい方でした。さらに自分が書いた原稿を手直ししていただき、その編集能力にも脱帽! H氏がいなければ、今の私はいないと言っても過言ではありません。この出会いはもう運命ですよね。

わからない人の気持ちがわかる

 そう、私の人生はいつも、環境が変わったときにはどん底からスタートするのですが、その都度、H氏のような、いろんな人に助けられ、支えられてなんとかここまでやってきました。小学校に入るときには、自分の名前を読むこともできず、中学校の成績はクラスのビリに近く、高校では最初の実力テストで下から数えてトップ10に入りました。大学では講義についていくことができず、企業に入社したときもギリギリ入ったとあとから人事の担当者から言われました。転職して2つの大学に採用されましたが、いつも面接の評価は最悪だったとか。だから現在の「教授」や「センター長」という肩書から「できる人」「すごい人」「賢い人」と思われがちなのですが、実はそんなことはなく、「できない人」や「わからない人」の気持ちの方がよりわかるつもりです。

 そうした私の人生の歩みが、冒頭の「誰でもわかる」というコンセプトの講演会につながっています。そして、この「誰でもわかる」という部分にH氏も共感してくれたのです。そのため、この『はじめてのAI』では、人工知能やコンピュータについての本なのに数式が一切出てきません。普段、私たちが使っている言葉で、身近な例を交えながら説明しています。それでいて、専門用語やキーワードはしっかりと収録しています。それがないと、「よーし、じゃあ勉強しよう!」と思ったときに、自分で調べることができないからです。このあたりの絶妙なさじ加減が、今回の本のセールスポイントでもあります。

理解を助ける写真、イラスト、図表を掲載
理解を助ける写真、イラスト、図表を掲載

 人工知能は、私の人生のようにぐねぐねと曲がりくねったりせず、無駄がなく、とてもスマートです。でも、その一方で、他人を思いやる気持ちや想像力はありません。そして、常識や倫理観もありません(人間が意図して、それらしいものをプログラミングしない限りは…)。だからと言って、人工知能を敵視したり、怖がったりする必要はありません。人工知能の本質を理解し、その能力を活用しながら、私たちが「人間らしい」生活を送れるように人工知能と共存する…。そのための道筋を示すことが、この本に込めたもう一つの思いです。

 今はもう、ある種の「教養」として人工知能のことを知っておかなければならない時代になりました。まさに今が人工知能を知るのに適した時期だと言えるでしょう。この好機に、ぜひ本書をお読みいただけると嬉しく思います。

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